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 最高裁判所の「君が代」ピアノ伴奏職務命令事件の判決は,とても重大な判決と言わざるを得ません。
 私は,もちろんこの最高裁の判断には,同意しかねる立場ですが,だからといって無視するわけにもいきませんから,ちゃんと向き合って,虚心坦懐にその内容を吟味する必要があると思います。

 本日現在,この判決の言わんとするところはよく分かりませんし,どんなふうに理解したらよいのか考えが及ばないので,もう少し考えてから,もう一度記事にしたいと思います。

 ただ,この判決の読み方については,いくつかポイントがあると思うので,そのことを指摘しておきたいと思います。

1 朝日新聞などは「これはピアノ伴奏に限った判決だ」と解説し,読売新聞や日経新聞などは「これで日の丸・君が代をめぐる紛争に決着がついた」と解説しています。
 どっちやねんなっ!と思われるかも知れませんし,どちらの意見もちょっと言い過ぎだと思います。
 この判決は,そういう中途半端な部分を残しています。
 どうやら,この判決を出すまでに,最高裁判事の五人は激論を交わしたようです。
 「教育現場における全体の統一性」を重視しようとした那須裁判官の補足意見と,
 「内心の自由の深さと重み」を慎重に検討すべきとした藤田裁判官の反対意見,
がありますが,これら2つの意見は真っ向から対立する意見です。
 最高裁判決が中途半端なのは,この両方の立場の最大公約数というか折衷的なところで折り合いを付けたからです。
 だから,過去の教育に関する最高裁判決に比べると,考察が浅いように読めるわけで,また,新聞によって受け止め方の色合いが変わるわけです。

2 最高裁は,社会の流れに敏感であろうとしています。
 というのは,全国各地で日の丸・君が代訴訟がたくさん係属していて,目下の大問題であるということや,また,教育基本法が改正されるなどして,現在,教育のあり方が「全体重視」あるいは「組織や統一感,規範の重視」という方向に舵を切っているという社会情勢があります。
 だからこそ,このタイミングで,あえて最高裁の立場を明らかにしておこうと考えたものと思われます。すなわち,最高裁は,あえて自らの口で,この問題についての姿勢を示そうとしたということです。
 しかし,社会に敏感であろうとしたが故に,それが勇み足とならなかったか,または,十分に熟した議論を経た結果といえるのか,というところが吟味されるべきです。

3 ところで,最高裁第三小法廷というのは,他の法廷と比べて保守的だと言われています。
 原理・原則よりも,雰囲気やバランスを重視する傾向があるように思います。
 たとえば,2週間ほど前には,サラ金に有利な過払金利息5%判決を出すなどして,一連の多重債務問題に対して一見逆行するような判決を出したばかりです。
 今回の判決にしても,本来,最高裁に求められる憲法の解釈や,人権の理念についての言及はほとんどなく,現実的問題の解決の視点のみに終始しているような感じがします。
 そういう意味で,最高裁判決であるからといって,全ての問いに「正解」が示されたと理解するのは誤りだと思います。

4 ちなみに最高裁の裁判官のプロフィールが公開されています。
 →こちらです http://www.courts.go.jp/saikosai/about/saibankan/index.html
 これによると,全体重視の意見を打ち出した那須裁判官の人柄や姿勢が,今回の判決に影響したことがうかがわれます。
◆裁判官としての心構え
 裁判に当たっては,憲法と法律を尊重しつつもこれまでに育んできた自らの良心を最後のよりどころとして,決断すべきときは果敢に決断したい。
◆好きな言葉
強くなくては生きていけない。優しくなくては生きる価値がない」
 すなわち,憲法や法律よりも,「強く生きる」という自分の信念を優先させたのかも知れません。

 また,藤田裁判官は,
 「絶えず,「何故そうなのか」を問いつつ,そうした結論になった理由をできるだけわかりやすく説明するよう心がけながら,裁判に臨みたい」
と言っていますから,まさにその姿勢どおりの反対意見を書いたように思えます。

 ついでに言うと,藤田裁判官の特技は,
ピアノ(小学一年生から高校二年生まで)
ということですから,今回のピアノ伴奏を強いられた音楽教師の内心について,その人の立場に立って考える素地を持っていたのかも知れません。

 こういう切り口で読み解くことも無意味ではないと思います。


いずれにしても,この判決については,もう少しじっくり読んで考えたいです。

参考のために,判決文補足意見反対意見の全文を以下に掲示しておきます。
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