韓国が「事実上の死刑廃止国」になったとのことである。
(→こちらのニュースより

 韓国における法的な諸制度は,日本の法システムとよく似ている。
 だから,制度としては,死刑も容認している。

 ただ,人権に関する制度については,やはり日本の方が一歩先に進んでいると思う。
 言うまでもなく,それは「日本国憲法」が優れているからだ。

 たとえば,死刑廃止に関して,日本の場合は,その根拠を憲法に求めようとすれば,
     「残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」
という憲法36条の規定がある。
 しかし,大韓民国憲法には,そのような規定がない。

 もっとも,いくら制度が優れていても,制度の使い方の善し悪しは,別問題だ。

 理由や経過は全く違うけれども,日本では,近時,死刑執行をどんどん進めているような傾向がある。
 他方,韓国は,10年間にわたり死刑執行を行わず,アムネスティ・インターナショナルから「事実上の死刑廃止国」の認定を受けた。

 もちろん,韓国でも死刑制度自体の存否については議論があるようだが,少なくとも人権先進性については,国際社会において,日本より一歩先に進んだ国となった。

 アムネスティが公表している今年9月19日現在の死刑の存廃国一覧は,以下のとおりである。
 こうして列挙してみると,死刑制度に限らず,
いろんな場面において(たとえば,平和・教育・ジェンダーなど),人権全般における先進性,後進性をあらわしている色分図のようにも見える。
 (太字は津久井による)
(1) 全面的に廃止した国
(法律上、いかなる犯罪に対しても死刑を規定していない国)

 アルバニア、アンドラ、アンゴラ、アルメニア、オーストラリアオーストリア、アゼルバイジャン、ベルギーブータンボスニア・ヘルツェゴビナブルガリア、カンボジア、カナダ、カボベルデ、コロンビア、コスタリカ、コートジボアール、クロアチア、キプロス、チェコ共和国、デンマーク、ジブチ、ドミニカ共和国、エクアドル、エストニア、フィンランド、フランス、グルジア、ドイツ、ギリシャ、ギニアビサウ、ハイチ、ホンジュラス、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、キリバス、リベリア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、マケドニア(旧ユーゴスラビア)、マルタ、マーシャル諸島、モーリシャス、メキシコ、ミクロネシア(連邦)、モルドバ、モナコ、モンテネグロ、モザンビーク、ナミビア、ネパールオランダ、ニュージーランド、ニカラグア、ニウエ、ノルウェー、パラウ、パナマ、パラグアイフィリピン、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、ルワンダ、サモア、サンマリノ、サントメプリンシペ、セネガル、セルビア、セーシェル、スロバキア共和国、スロベニア、ソロモン諸島、南アフリカ、スペイン、スウェーデン、スイス、東チモール、トルコ、トルクメニスタン、ツバル、ウクライナ、英国、ウルグアイ、バヌアツ、バチカン市国、ベネズエラ


(2) 通常犯罪のみ廃止した国
(軍法下の犯罪や特異な状況における犯罪のような例外的な犯罪にのみ、法律で死刑を規定している国)

 アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、クック諸島、エルサルバドル、フィジー、イスラエル、キルギスタン、ラトビア、ペルー


(3)  事実上の廃止国
(殺人のような通常の犯罪に対して死刑制度を存置しているが、過去10年間に執行がなされておらず、死刑執行をしない政策または確立した慣例を持っていると思われる国。死刑を適用しないという国際的な公約をしている国も含まれる。)

 アルジェリア、ベニン、ブルネイ・ダルサラーム、ブルキナファソ、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、エリトリア、ガボン、ガンビア、ガーナ、グレナダ、ケニア、ラオス、マダガスカル、マラウィ、モルディブ、マリ、モーリタニア、モロッコ、ビルマ(ミャンマー)、ナウル、ニジェール、パプアニューギニア、ロシア、スリランカ、スリナム、スワジランド、タンザニア、トーゴ、トンガ、チュニジア、ザンビア


(4) 存置国
(通常の犯罪に対して死刑を存置している国)

 アフガニスタン、アンティグアバーブーダ、バハマ、バーレーン、バングラデシュ、バルバドス、ベラルーシ、ベリーズ、ボツワナ、ブルンジ、カメルーン、チャド、中国、コモロ、コンゴ民主共和国、キューバドミニカエジプト、赤道ギニア、エチオピア、グアテマラ、ギニア、ガイアナ、インド、インドネシア、イラン、イラク、ジャマイカ、日本、ヨルダンカザフスタン、朝鮮民主主義人民共和国大韓民国クウェート、レバノン、レソト、リビア、マレーシア、モンゴル、ナイジェリア、オマーン、パキスタン、パレスチナ自治政府、カタール、セントクリストファーネビス、セントルシア、セントビンセント・グレナディーン、サウジアラビア、シエラレオネ、シンガポール、ソマリア、スーダン、シリア、台湾、タジキスタン、タイ、トリニダード・トバゴ、ウガンダ、アラブ首長国連邦、米国、ウズベキスタン、ベトナム、イエメン、ジンバブエ



 こうして並べてみると,治安の悪い国には死刑が存置されているような印象も受ける。
 治安が悪いから死刑が必要なのか,死刑を容認するような文化が治安を悪くしているのか,その因果関係の有無はよく分からないが,その国の「文化としての人権」の感覚と全く無関係というわけではないだろう。

 我が国は,憲法前文で次のように宣言している
「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」

 私たちは,この誓いに近づく努力をしているのかどうか,と考え込んでしまう。
 制度や法システムが悪いのではなく,その使い方に問題があるのではないかと。