「自衛目的に限定して軍隊を持ち,戦争のために軍事力を行使しない」
というのが建前ですけれども,現実問題として,そんなキレイに使い分けることなどできません

 だから,私たちの国では,軍事力を持ちながらも,常に注意を払って軍隊を厳しくチェックし,その増長には謙抑的であらねばなりません。
 たとえば,病院で,“有用だけれども危険な劇薬”を,厳重に管理保管し,慎重に取り扱わなければならないのと同じです。

 今回,元事務次官の自衛隊員倫理規定違反の問題が発覚し,また,海上自衛隊の給油量の偽装問題が発覚していますが,こんなのは氷山の一角に過ぎないに違いありません。

 自衛隊内の情報のほとんどは機密事項です。人の目に触れることがありません。
 だから,どれだけの過ちが見過ごされてきたのか,それも分かりません。

 ノーベル平和賞を受賞した佐藤栄作氏の内閣の下で,防衛庁長官を務めた増田甲子七氏の昭和42年07月06日の衆議院・内閣委員会での大臣としての答弁を一部引用します。
(強調部分は津久井による。)
 わが国に、自衛隊法並びに防衛庁設置法によりまして、シビリアンコントロールの制度は確立をいたしておるわけでございます。すなわち、平時におきましても、国防会議の議長である、また内閣の代表者である総理大臣が、つまり山本さんと私と同様に、せびろを着ておる者が制服を着ておる者をコントロールをする、こういうしかけはりっぱにでき上がっております
 そこで、平素におきましては、せびろを着ておる私を助ける者として、同じくせびろを着ておる事務次官、官房長あるいは各局長、それから課員、部員、すべてせびろを着ておるわけでございまして、そのせびろを着ておる者が、すなわち文民が制服を指揮監督する、直接指揮監督するのは私でございますが、私が指揮監督する場合に私の補助をする、こういう立て方に内局方面におきましてはなっております。
 それから、幕僚部におきましては、幕僚部というものはもとより制服を着ておるわけでございますが、制服を着ております統合幕僚議長、それから陸幕長、海幕長、空幕長等を通じまして、せびろを着ている防衛庁長官が、隊の動かし方につきましても指揮監督する、こういうしかけでございます。
 昔のことばで申しますと、軍令、軍政、両方面を握っておるのが内閣総理大臣でございまして、その指揮監督を受けまして私が隊務を総括する、これが文民統制、シビルコントロールの実態でございます。
 今回の給油量偽装は,文民である防衛庁長官には伝わっていなかったそうですし,背広を着ている事務次官そのものが規制の抜け穴をくぐろうとしていたわけですから,「しかけはりっぱに出来上がっている」という建前と,違法な実態が,いかにかけ離れていたかが分かります。

 昨日,NHKスペシャル「鬼太郎が見た玉砕~水木しげるの戦争~」の再放送をやっていました。
 (友人の娘さんが子役で出ていたので,ちゃんと見たのですが,)軍隊が過ちを隠蔽するために,極めて不合理な行動(「玉砕」)に走った有様が,生々しく語られていました。

 こんな,現代ではありえないように思える悲劇ですが,現実に起きている現場の出来事しては,決して驚くべき事ではありません。
 十分にあり得る話です。

 現実にはありえない理想の「タテマエ」を信じて,これを前提にして,軍事増強を説く人々の非現実性を疑います。
 守屋元事務次官しかり。石破防衛大臣しかり。