平成20年1月14日に,日本災害復興学会で開催された復興デザイン研究会で,台湾から来られた謝志誠さん(“九二一震災重建(再建)基金会”)の講演があった。

20080113103753.jpg なお,もう忘れてしまっている人も多かろうが,「九二一」というのは1999年9月21日に起こった台湾集集地震のことである。


 この“九二一震災重建再建基金会”は,住宅復興に及び腰である日本よりも,かなり直接的に個人の住宅の再建支援や,集落移転支援などに利用されている。
 謝さんの言葉によれば「家は人類昔からの望み」とのことで,この住宅再建の思想が基金会のコンセプトでもあるそうだ。
 謝さんからは,
    「被災者の需要が第一」
という言葉が出てきた。
 これこそ片山善博さんが提唱する「災害復興のミッション」と全く同じ意味である。
 ところや国が変われども,本質を知る人の考えは,いつも一緒だ。


 台湾の復興の最前線で活動していた謝さんは,平時にこそ復興の問題を考えるべきだという。
 簡単ではあるが,謝さんが掲げた今後の復興のテーマ(台湾語で「策略」というらしい。)をまとめておく。
 <策略>
   策略1 しっかり再建に備える
   策略2 専門知識を大衆化する
   策略3 相互の責任を約束する
   策略4 選択に順番をつける
   策略5 臨門(最終的な合意形成)の仕組みを微調整する
   策略6 社会的弱者に向き合い,先に再建・建築をしてから,賃貸や売却を考える
 この中で,「専門知識を大衆化する」という課題については,私たち法律実務家に,常に突き付けられた命題と同じである。
 弁護士の場合,ワケが分からなくて難解な法律を,市民の方々に分かりやすく説明・提供するのが,その社会的責務だからだ。


 ところで,台湾では,先般の921地震に際して,たいへん積極的な法政策が取られたらしい。
 この点は,基本的に政策自体が乏しかった日本とは違う。

 台湾では,
   ①抜本的な特別法を制定し,諸手続きを円滑化,迅速化した,
   ②多様な選択肢を呈示した
   ③潤沢な予算根拠を設けた,

などという施策が行われたということである。

 これは,大いに学ぶべきだ。


 しかし,台湾でも,やはり共通する課題を抱えているらしい。

 ① 良質な政策が提供されたものの,

        ↓しかし,

 ② 行政が予算の消化に極めて保守的で,

        ↓さらに,

 ③ 政策の実行力・積極性に欠けていた,

ということで,せっかくの良質の政策が十分実施されず,予算を消化し切れなかったということだそうだ。


 日本でも,良質な政策や,良質な法律が制定されているのにもかかわらず,そのとおりに実施されていない状態が散見される。

 たとえば,昨日のシンポで,泉田裕彦新潟県知事は,新潟県中越地震で,災害復興対策について,被災地の実情を訴えて,相応の予算の確保に政治的に成功したにもかかわらず,行政(とりわけ財務行政)のレベルで,その執行に著しい絞りが掛けられ,せっかく得られた予算を,使うことができず,「剰余金」として国に返還を余儀なくされたという例が語られた。

 良い政策が明示されているのに,それを実施しない!
 その最たるものが,「日本国憲法」であろう。

  ◆良い政策          (=いわば頭)

  ◆これを支える予算と民意 (=いわば物・心)

  ◆これを実行する積極性  (=いわば手足)


は,何事にも通じる必須の三要素ではなかろうか。