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 教育基本法のことがあって(教基法関連については,たくさん書きました。そこで,これまでの記事は「教育」という分類を作って,そちらに入れました),後回しになっていた記事がいくつかありますので,順次紹介していきます。

 東京新聞の記事ですが,医療事故の被害者に対して,医師が無過失でも被害者に補償する,という制度は,とても画期的で意義ある取り組みです。

 医療事故がありますと,医療過誤訴訟などが起きたりします。
 弁護士が言うのもなんですが,医療過誤訴訟になると,患者も医師も救われず,多難と心労を強いられて,いいことがありません。

 患者にとって,事故を受け止めること自体が辛い現実であり,その上に,訴訟に取り組むというのはたいへんな負担ですし,専門性(医療と法律)の大きな壁にぶちあたらざるを得ません。
 その上,「医師に過失が無い」と判断されると,全く救済もされません。

 一方,あまり知られていませんが,医療側も訴えられるとたいへんなダメージを被ります。
 もちろん,新聞報道されるような重大なミスのあるケースもあります。
 しかし,一生懸命医療に取り組んで,患者を助けようとしたけれども,力が及ばず残念な結果となった良心的なケースで,医師に責任を問うのは気の毒な場合もあります。
 それでも,結果が重大な場合は,信頼関係が不十分な場合は,訴訟になることがあります。

 ひとたび医療訴訟が起きると,医療現場には萎縮効果が生じます。
 もちろん「ミス」を防げばいいのですが,防ぐ前に,怖れたり逃げたりするのが人情です。
 だから,難しいケースに遭遇すると責任回避のためにたらい回しになりがちです。もし,引き受けてしまって事故が起こると莫大な責任を負う可能性があるからです。
 最近の裁判の傾向を見て,ビクビクしながら安全策ばかりを考えている医師がいます。難しい分野(小児科など)を避ける傾向が生じています。
 医療の先進的な発展にも悪影響が及んでしまうことさえあります。
 結果として,患者も救われなくなってしまいます。

 なんだかおかしな具合になってきて,悪循環が生じつつあります。

 よい医療を目指そう,というところでは両者ともに共通の思いがあるはずです。


 そこで,医療過誤訴訟に長年にわたってかかわって来られた第一人者の名古屋の弁護士である加藤良夫先生を中心にして,
  「医療被害防止・救済センター」
を立ち上げるべく「医療被害防止・救済システムの実現をめざす会」がつくられています(→HPはこちら
(→加藤先生の医療事故情報センターのHPはこちら

 このセンターのねらいは,
 医療被害者(医療の場において医療の作為・不作為によって被害を受けた人及び遺族)を速やかに救済するとともに、被害事例から教訓を引き出し再発防止・診療レベルの向上・システムの改善・患者の権利の確立等に役立てる

というところにあるということです(→HPはこちら

これに関連して新聞記事を紹介します。
東京新聞の11月25日の記事です。

分娩事故 医師無過失でも補償

 分娩(ぶんべん)事故で障害児が生まれた場合、医師の過失がなくても患者に補償金を支払う「無過失補償制度」について、政府・与党が検討している制度案の全容が二十四日、明らかになった。
「運営機構」(仮称)を新設し、医療機関が機構を通じて民間の保険に任意で加入。事故が起きた場合は、機構が審査し、給付対象なら一件数千万円を補償、原因分析や情報公開もする。

 産科医不足の一因とされる訴訟リスクを軽減、患者を迅速に救済することが狙い。国も少子化対策に資するとして制度を財政支援する。

 月内に開かれる自民党検討会で了承を取り付け、早ければ来秋の補正予算に必要経費を盛り込みたい考え。

 補償の対象は通常の分娩で脳性まひになり、障害一-二級と診断された赤ちゃんで、先天性の障害や未熟児は対象外。

 保険料負担に伴い分娩費の上昇が予想されるため、健康保険から妊産婦に支給される出産育児一時金(子ども一人当たり三十五万円)を数万円増額し、妊産婦に負担が及ばないようにする。

 一時金の増額分は、国が健康保険組合に対し財政支援する方針。国は機構の運営事務費も支援する。

 補償金が支払われた場合でも、患者が医療機関などに損害賠償を求める権利を認めるが、訴訟などで賠償金を受け取った場合は補償金返還を求める案も浮上している。

 運営機構は事故の再発防止のため原因について情報公開するほか、過失があれば、医師賠償責任保険(医賠責)などに補償を求める。

 将来的には分娩を手掛ける全医療機関が強制加入するための法整備も検討する。

 日本医師会の推計では、分娩にかかわる重度の脳性まひ患者は年間約二百五十人。

 医療事故では、医師に過失があれば医賠責で補償されるが、分娩事故では原因がはっきりしないケースが多い。二〇〇四年の医師千人当たりの訴訟件数は産婦人科が一一・八件(最高裁調べ)と最多で、産婦人科医のなり手が少ない一因となっているとの指摘がある。


 この構想は,基本的な発想は,「医療被害防止・救済センター」構想に似ていますが,大事な点で,違っています。

 まず,財源ですが,本来は国家予算などの公的な基金によるべきなのに,民間の保険でまかなおうとするものです。
 現政府は,福祉的なことにお金を出すのが本当に嫌いなようです。

 次に,責任追及の方法について曖昧です。センター構想では,医師の萎縮的効果を避けて,訴訟は選択できないように考えています。

 やはり発想は同じでも理念が違うんでしょうかね。
 「医療被害防止・救済センター」構想の「基本的な視点」を引用しておきます(→HPはこちら

① アクセスの容易性(電話,FAX,手紙等による受付)
② 迅速な救済(相談受付から3ケ月を目安とする)
③ 判定における公平さ、透明性
④ 情報公開(インターネットにホームページを開く)
⑤ 誤ちから学び医療の質の向上を図る
⑥ 市民参加、市民監視
⑦ このシステムで救済された人は裁判上の請求権を失う

 政府構想は,少子化対策とか,産科医不足の解消などという,二次的な目的を冒頭に標榜するので,どこか理念がねじまがって,中途半端な制度設計になるのでしょうでしょう。
 政府も,たまに良いことをしようとするのだから,せめて中途半端なものを作らないようにしてもらいたいものです。


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