上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 中村紀洋選手のオリックス退団が大きく報道されています。
 そして,その原因として,代理人交渉を行った点に問題があるとか,代理人自身に問題があるなどという指摘もなされています。

 うちの事務所は中村選手の地元にありますし,中村選手の代理人を務めていた茂木立仁弁護士は,私も親しくしている同期の弁護士ですが,そういうこともあって,他人事とは思えず,今回の交渉過程は関心を持って見ていました。

 どうも世間の認識は,なんかちょっとずれとるなあ,と感じていました。
 何が私の違和感の原因なのか整理をしてみました。

 1つ目は,プロ野球界というのは圧倒的に球団側が強者ですが,強者の側が「決まり」を守らない,ということ。

 2つ目は,これを見守る世間やマスコミも,「決まり」の存在を軽く見ているなあ,ということ。

 3つ目は,プロ野球交渉における「代理人」というのは,相手方のスケープゴードにもなっちゃうんだなあ,ということ。

もう少し詳しく説明します。
 まず,一つ目の「決まりごとの軽視」の点ですが,今回の交渉のもつれの原因は,明らかにオリックスの側にあると解されます。
 日本プロ野球の野球協約は,公表されています。誰でも閲覧できます(→HPはこちら)。この協約は,「決まりごと」つまり法律的な効力があるわけです。
 野球協約には,次のような規定があります。
第92条 (参稼報酬の減額制限)
次年度選手契約が締結される場合、選手のその年度の参稼報酬の金額から左記のパーセンテージを超えて減額されることはない。ただし、選手の同意があればこの限りではない。
その年度の参稼報酬の金額とは統一契約書に明記された金額であって、出場選手追加参稼報酬または試合分配金を含まない。
(1)選手のその年度の参稼報酬の金額が1億円を超えている場合、40パーセントまでとする。
 ところが,オリックスは当初から60%減の呈示をしてきたわけです。本人の同意があれば例外ありとされていますが,本人が拒絶しているにもかかわらず,最後までこの60%ラインを前提に交渉を進めてきたわけで,明らかに「決まりごと」を軽視しています。

 この件はノリ自身も「お金の問題じゃない」と言っていますが(→ノリのブログはこちら),確かに,金額そのもの問題ではないでしょう。
   ・決まりを超えるような著しく低い評価だった
ことに憤慨をしてのだろうし,私は,
   ・本人の意思に反して「同意」を求めようとする
という契約強要の悪徳商法のごとく,形式だけの順法精神に違和感を覚えるわけです。

 話は逸れますが,この国では,エライ人ほど約束や決まりを軽視します。
   首相は,憲法尊重擁護義務(憲法99条)を堂々と破り
   大臣らは,自ら定めた政治資金規正法を次々に破り
   文部科学省は,教育基本法を守らず,自己に都合の良い法律に置き換える,
   財界も,都合の悪い社会規制を,「規制緩和」の美名の下で,次々に破る,
といった次第で,上に行けば行くほど決まりを軽視する傾向があります。
 スポーツマンシップの頂点にあるべきプロ野球界でも,
   選手は決まりを守るが,球団は決まりを軽視する。
   球団相互でも,巨人のような強い球団ほど約束を軽視する。
   約束無視の先頭を行くナベツネ氏が最大の実力者である。
こんなふうに決まりごとを軽視する側の方が,勝ち組になるのだから,この国に規範意識などが育つわけがありませんよね。

 さて,話を戻しますが,中村選手は,今回の交渉で何一つ約束違反はしていません。
 茂木立弁護士は,彼自身が相当なスポーツマンですけれども,性格も不正や誤魔化しが嫌いで,紳士的でスポーツマンシップを重んじる誠実な人柄です。約束はきっちり守る弁護士です。
 そのような,決まりごとを前にした態度というか,誠実さの違いが全く表に出ていない点に,強い違和感を覚えるのです。



 2点目の世間やマスコミが決まりを軽く見ているというのは,アメリカとの最も大きな違いでしょうね。
 スポーツ紙が面白おかしく取り上げるのは,ミスや,手違い,イメージに関することばかりでした。
 明らかな誤報もありました。

 「契約交渉」なのだから,契約手続きの内容が論点でしょう。

 ところが,契約の周辺事情のいきさつにスポットをあてて,契約内容や手続きの当否に目を向けないのは,「中身を見ないで雰囲気だけで決めちゃう」,という軽薄さのあらわれです。

 またまた話が逸れますが,形や雰囲気だけ「美しい国」にして,中身の充実に目を向けない施策に通ずるものがあるような気がします。
 ファンをはじめとする大衆が,本当の論点に目を向けない点に,違和感を感じました。



 3つ目ですが,これはオリックスにはめられた」と思われる点です。

 これまで過去のプロ野球の代理人交渉でもそうでしたが,代理人の弁護士を「ヒール(悪役)」に仕立て上げようという構図があります。

 私も弁護士として代理人の役目を業にしていますが,依頼者の代理人なのですから,
   依頼者が被るべき泥を代わりにかぶる
ということは,避けられない宿命だと思います。
 中村選手に向けられるべき批判を,代理人が代わりの盾となって被るというのは,本望だといえるでしょう。

 ところが,今回は,相手方であるオリックスが,自分たちのずるい主張や立ち回りを棚に上げ,言った言わないの問題についても,その問題の原因を,全て代理人に押し付けています。
 なぜ相手方の不手際を,こちらの代理人がかぶらなければならないのか?
 茂木立弁護士は,ノリの代理人であって,オリックスのスケープゴード(=「他人の罪を負わされた人」「罪などをなすりつけられた人のこと」「身代わり」の意味)ではありません。

 オリックスという会社は,今や財界における巨人です。
 オリックスはクレジット事業が本体ですが,多重債務事件で債権者として交渉する際には,オリックスは非常に厳しく冷徹な姿勢を貫くという傾向があります。
 この傾向は,多重債務問題に携わる弁護士間では定説です。
 また,代表の宮内氏は,規制緩和政策(=言い方を換えると,「従来の決まり事を破ろう」という扇動運動)の先頭を行っていた人で,まさに自己に都合の悪い規制を数多く廃した原動力となった人です。

 もちろん,プロ野球交渉においても,交渉術にかけては,たくさんの顧問弁護士も控えていますし,組織力も1人の代理人弁護士とは比べものにならないほど強力です。
 今回のドタバタ劇を振り返ってみると,オリックスのツケを代理人に回された,「してやられた」と感じるのです。
 どうして,その点が理解されないのだろうか。


とても長くなってしまいました。
いろいろ思うところがあるので整理がついていないという面もありますが,目を通して頂いてありがとうございます。

 中村選手には良い方向に流れて来期は目の覚めるような活躍を欲しいと思いますし,茂木立弁護士には今回の件で得られた経験を活かしてさらなる代理人交渉活動を頑張ってもらいたいと思います。
クリックして下さいクリックして下さいクリックして下さい
Secret

TrackBackURL
→http://tukui.blog55.fc2.com/tb.php/211-282c3c33
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。