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 昨日,国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会(略して「事故調」(じこちょう)などと言われます。)が,JR福知山線列車事故の被害者を対象とした説明会を開きました。
(→神戸新聞記事はこちら
 
 私は当事者ではありませんから,参加できませんでしたし,未だ被害者の方々から直接ご意見を聞いたわけではありません。
 したがって,報道から得た情報だけですけれども,参加した被害者の方々のコメントによれば,
  ◆事故調には期待感を持てる
という評価があったようですから,前回(平成17年秋)の説明会のときよりも,事故調の姿勢自体に大きな前進が見られるように思えます。

 その前進のあり様について,具体的には,
    単なる行政機関の派生として報告書をとりまとめるだけの組織
             ↓
    真面目に取り組むものの,中立性を過剰に重視して,中途半端な行動しかできない組織
             ↓
    目的達成のために,バイアスに影響を受けずに独立して行動する組織
             ↓
    教訓を形にするために勇気をもって真実に切り込む組織

というようにイメージを整理できるかな,というような感じです。
 
 もともと,事故調は,次のような歴史を辿っています。
task.jpg
 ◇1971年7月30日の雫石事故(全日空旅客機と航空自衛隊の戦闘機が衝突した事故)をきっかけに,航空事故調査委員会として発足しました。
         ↓
 ◇鉄道事故については,その都度,当該事故限りの特別調査委員会などを置いたりしましたが,航空事故のような本格調査を行う恒常的組織はありませんでした。
         ↓
 ◇その後,1991年5月14日に信楽高原鐵道列車衝突事故が発生しました。
 この事故の遺族と弁護団は,鉄道事故について,きちんとした事故調査委員会がないのは問題であるとして,米国の国家運輸安全委員会(NTSB)のような機関が必要だと訴えました。
 その意見をまとめた本が,この
    「鉄道事故の再発防止を求めて」
という本です。
         ↓
 ◇その後,2000年3月8日には,営団地下鉄日比谷線脱線衝突事故が起きて,これをきっかけに,2001年10月1日に航空・鉄道事故調査委員会に改組されて,鉄道に関する事故調が発足したというわけです。
 この経過について,月刊現代2007年2月号で柳田邦男さんが『憂国提言「命の危機管理体制」を確立せよ』という論文で,次のような指摘をされています。
 犠牲となった乗客の遺族たちが,事故原因について運輸省の調査にも二つの鉄道会社の説明にも納得できないでいたところ,法律家の立場で鉄道の安全に強い関心を持つ弁護士グループから,徹底した事故原因の究明のために,独立した鉄道事故調査機関の設置を求める運動を起こそうという提案を受けた。その後,両者が一体となって活動団体の鉄道安全推進会議(TASK)を発足させた。
 弁護士グループは私が1977年に出した『新幹線事故』(中公新書)の中で,鉄道事故調査機関を設けるべきだと提言しているのを読んでヒントを得たという。私はTASKの人々と会い,欧米各国の事故調査体制を調べて,日本の行政を動かすてこにするといいのではないかと提案した。
 TASKの戦略はみごとだった。調査団がアメリカ,英国,オランダを廻り,各国が鉄道事故を含む各種事故の独立した調査機関を設けて,しっかりとした活動を定着させている実態を把握して帰り,その詳細な報告書『鉄道事故の再発防止を求めて 日米英の事故調査制度の研究』(日本経済評論社,98年)を刊行するとともに,国会への陳情,米・英・オランダの事故調査機関の代表を東京に招き,運輸省の課長クラスの参加を求めてのフォーラムの開催などを次々に行なったのだ。こうした動きの中で,00年3月に東京の地下鉄日比谷線の脱線・衝突事故が起きたことから,運輸省の鉄道技術審議会が鉄道事故調査体制の確立を政策課題にするよう答申したことから,法改正が行なわれて,01年10月航空・鉄道事故調査委員会が発足した。
 この鉄道事故の調査機関は,事故の被害者の要求がそもそもの原動力となったという点で,時代の新しい潮流を示したものとして注目すべきであろう。国民のいのちの安全保障を国家の政策の優先課題にのし上げる日に向かっての小さいが確実な一歩と言える。


 もっとも,まだまだ事故調については,期待するものがあります。

 たとえばNTSBは,行政から完全に独立した第三者機関なのだそうです。
 行政の施策についても,積極的な批判的見解を出すことが出来ます。
 日本の事故調は,あくまでも国土交通省の下位機関ですから,国土交通省の施策に対しては,注文を出しにくい。
 実際,今回の「事実関係報告書案」でも,そのへんには必ずしも踏み込んでいません。

 また,NTSBは,事故調査は,単に社会のためだけでなく被害者のためにもある,という姿勢が貫かれているそうです。
 たとえば,調査の経過や結果の発表についても,プレス報道の前に,まず被害者らに説明をするのだそうです。
 日本の事故調は,被害者もあくまで第三者であり,被害者よりも先にプレス発表を行います。
 今回は,被害者向けの説明会を行うなど,一定の配慮をしている点で前進は見られますが,基本的スタンスについて,もっと前進をさせる必要があるでしょう。

 JR福知山線列車事故からまもなく2年目を迎えます。
 原因究明に向けての課題は,まだまだたくさんありそうです。

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