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 被災者生活再建支援法という法律があります(→全文はこちら

 この法律は,阪神・淡路大震災をきっかけにして,生活基盤を失ってしまった被災者に対する公的な支援を行うために作られた法律です。
 当時の「自然災害について,個人補償はできない」という政府の消極的な姿勢に対し,「それはおかしいぞ!」と人々が立ち上がった結果,大きな市民運動,地元自治体の活動,一部国会議員の活動などの展開につながり,平成10年にようやく成立に漕ぎ着けた,たいへん意義のある法律です。
(なお,政府が「個人補償」という言葉を好んで使っていたのは,お金を支出したくないための言葉のマヤカシです。「被災者支援」「災害弱者への社会保障」は,言うまでもなく公の義務です。JRが「賠償」と言わず「補償」という言葉をあえて使っているのに似ています。)

 この法律を見直すために,
    被災者生活再建支援制度に関する検討会
という有識者会議が開かれています。(→詳しくはこちら
 第2回目までが終わりました。(→第1回議事録はこちら第2回はこちら
 第3回目は,5月28日に開催されます。(→案内はこちら
 第3回目には関係者のヒアリングが予定されていて,4人のうちのひとりが,永松伸吾さんです。

 永松伸吾さんは,人と防災未来センターの専任研究員でしたが,この4月に,防災科学技術研究所に移籍されました。
 この「防災」という分野は,理系の研究員ばかりの世界でしたが,永松さんは文系出身(法学部)で,それだけでも貴重な存在です。特に,専門とされている,
    被災地の経済復興
の分野についての切り口は,たいへん見事です。きっと実践が伴っているから,論にも説得力があるのでしょう。(→HPはこちら

nagamatu.jpg 神戸新聞にも,ちょこちょこエッセイを書かれていて,そちらの方もなかなか面白いので,実は私は隠れファンです。
 なんかの折りに,永松さんからこのブログへの包括的な転載許可をいただいているので(そうですよね,永松さん/笑),機会があればご紹介します。
(こちらは永松さんのHPです)

 次回の検討会での,永松さんの発言に期待を込めてエールを送らせていただきたいと思います。


 さて,ところで,この「被災者生活再建支援制度に関する検討会」には,当初から有識者・関係者からのヒアリングが予定されていたのですが,当初に発出された「検討会の進め方(案)」という文章を見ると,ヒアリング対象者の中には,
    「法曹関係者」
という記載もありました。
 これは,「日弁連関係者ではないか?」と目されていた点もあったのですが,どうやらボツになってしまっているようです。

 そうすると,検討会の関係者は,今回の法改正では「もはや法律理論の障害はない」という考えに至っているんでしょうね。
 つまり,制度の法理論的な問題は克服されたので,もう法曹関係者から意見を聞く必要はない。あとは「政府にやる気があるかないか」だけの問題だ,ということなんでしょう。

 そうだとすると,法理論を盾に制度改善を先送りすることは許されません。しっかりと被災地の意見に耳を傾けて,
   「悪いところは直す」 
   「不十分なところは拡充する」
という,当たり前の法改正の作業を期待します。


 なお,以下,これまでの検討会で,出ている意見を,私の備忘録代わりに列挙しておきます。
<第1回の会議で出た意見>

○住まいには公共性があり、被災した住宅を再生しないと都市も再生しない。大規模災害に際し、社会を再生するため、国も一緒に取り組むんだというメッセージ、将来個人の住宅がどう再生されるかという事を示すことが大事だ。

○各県で単独制度を作っている意図としては、県内の公平性の観点や地域コミュニティの維持の観点等からは国制度には落ち度があるために補完せざるを得ないということである。

○どの程度の災害規模を想定して議論するかが重要。実現できない安心・安全を言っても仕方ない。実際に大規模災害の発生が予測されており、実現可能性を考えながら議論すべき。

○被災者に対する支援は現物給付が原則だが、復興に効果が上がるのは現金給付という考えもある。現物給付と現金給付との関係についてシミュレーションを行い、どの方法がより合理的かを比較検討すべき。

○壊れない住宅の建設もしながら、それでも被害を受けたら支援をする。誰もが被災する可能性がある我が国において、被災者生活再建支援制度はセーフティネットとして必要。その場合どんな支援がよいのか、どの程度の災害に対して支援するか皆が納得できる形で決めることが重要。

○住まいの再建は生活再建ひいては地域の再生にとって重要。住宅再建を被災者生活再建支援法のみで考えるのは無理がある。融資や補修などと組み合わせて総合的に考えるべき。例えば、補修に関しては、全壊と判定されても補修して住めるので、実態に沿った支援を考えるべき。

○今世紀前半に起きるであろういくつかの巨大災害に対して、国がどれだけの資源を投入できるのかということが議論の前提になる。事後的に巨費を投入して救済することより、むしろ事前対策のインセンティブとしてこの制度を活用できないか。

○災害規模が大きくなればなるほど補修の活用が重要になる。制度の改善に反映すべき。

○耐震補強や地震保険、災害保険についてある程度の強制化を行うことに関する議論を今一度すべきではないか。

○予防対策は促進しないといけないが、いくらやっても必ず被害は出る。そういう認識の上に立って被災者の救済策を考えなければならない。首都直下地震といえども阪神・淡路大震災の数倍程度の被害でしかなく、国の財政力で対応できないことはない。

○被災した企業は事業所を他地域に移転することも多いが、サラリーマンはそれに合わせて住み替えをすることになる。同じ地域に住み続けるのが唯一の生活再建と考えるべきではない。

○高齢者は平均的に豊かだが、個々に見れば格差が大きく、国として何らかの支援をする必要がある。一つの制度でどこまでも対応するのは無理がある。中小規模の災害と大規模な災害とに分けて考えるべき。そのとき、地方と国の役割を切り分けて考えることも重要。

○神戸でも震災後コミュニティが壊れたことによって都市が疲弊しているように見える。それにどのように対応し、どう地域を復興させるのかを都市政策、社会政策として検討すべき。自助も社会的に強制しないと進まない。自己責任だからといって放っておいて良いということはない。

<第2回のヒアリングで出た意見>
(ヒアリング対象者)
   泉田 裕彦(新潟県知事)
   森 民夫(長岡市長)
   小林 郁雄(阪神大震災復興市民まちづくり支援ネットワーク代表)
   ※小林郁雄さんは,阪神・淡路まちづくり支援機構の付属研究会の研究委員でもあります。
   山崎 登(NHK解説主幹)


○被災者支援は、国が全国一律の基準で制度を運用すると不合理な対応が生じて、結果的に国の負担を増やす場合がある。市町村や行政区など、より住民に近い地域の力を活用すれば、真に支援が必要な人への支援が可能となる。国は、被害に応じて資金を一括して自治体に給付し、自治体の裁量で配分する制度を検討すべき。

○支援法は使途が細かく定められていることの弊害が非常に大きい。例えば、制度内容を被災者に説明するだけで大変な時間がかかり、自治体職員が多忙を極めた。大都市では対応は難しいのではないか。

○住宅の被害程度4区分(全壊、大規模半壊、半壊、その他)に応じた支給ではなく、被害点数(経済的損失の割合:%)掛ける単価とすべき。今の方法では、被害程度のランクひとつで支給額が大きく異なる。そのため、被害認定のやり直しが多くなりやすい。

○収入・年齢要件は、建前上公平でも、他者と比較すると不公平感が強く出てくる場合がある。自治体の裁量で配分できるようにすれば、地域の実態に応じた対応が可能となり、不公平感も減少するのではないか。

○地域の人たちが自分自身で立ち直ることが復興。その上で、現実に自立できない人に必要最小限の支援をするのが支援法の役割。一番重要な支援は、すまいの再建支援。すまいが復興しなければ、「まち」、「くらし」は復興できない。①すまいの復興の展望、②高齢者のすまいの再建、③個別住宅の自主再建の支援、④新しい居住様式の導入、がすまいの再建のために必要。

○居住安定支援制度が限度額まで使い切れていない現状からすると、制度創設当初の積算は間違いだったのではないか。住宅再建は通常、1,500万円程度は必要。
住宅本体を対象とするなら限度額を500万円にして、残りを「自助」「共助」で補うのが妥当ではないか。

○住宅の再建が進まないと、まちの復興も、地域の復興も進まない。すまいの再建が一番重要。支援制度は使い勝手に問題があり、自治体が独自の対応をしている。国と自治体の制度を比べたとき、自治体のほうが多く使われている。実効性にここまで差があるなら、制度を考え直すべき点があるのではないか。視点としては、①支給条件や使途制限をどう考えるか、②事務手続きの簡素化、③住宅再建に関わる制度全体からの視点、がある。いずれにしても、被災者と被災自治体に対して、支援の気持ちがストレートに伝わる制度にしてほしい。

<第2回のヒアリング終了後の主な意見>

○ヒアリングを通じて、地域に応じた問題が大きいと感じた。中央であまり細かい基準を決めるのは馴染まないのではないか。これは、透明性、公平性という一般的な行政法の考え方とは違うが、ある程度は自治体の判断に任せる部分が必要かもしれない。その際、事後評価や不服申し立ての仕組みを整備することが必要。

○自治体の首長の判断が尊重されるべきとのことだが、その場合は、自治体において前提となる復興計画が必要ではないか。

○住宅が倒壊しなければ、災害後のコストも減少する。その意味で事前の耐震改修が重要であり、全国的に進めていくべき。

○首都直下地震の場合にどうなるか、大まかな想定はできないか。

○制度全体の見直しについて、しっかりと議論することが必要。そういった議論を通じて、耐震補強と支援制度との関係や国と地方との関係といったものが見えてくる。

○耐震改修をして保険を義務付ければ良いが、現実にはできない人もいるわけで、そこのところをどう解いていくかが問題。

○例えば、宅地の復旧は住宅再建には重要だが、支援制度の対象にはなっていない。必要なところに使える制度にすることが有効。

○災害がどこで発生しても被災者支援の考え方は変わらない。どのような思想の下に支援を行っていくのかを議論する必要がある。例えば、「人間の安全保障」という観点や、「天災に対する社会防衛」というような考え方があり、そこからは一種の社会性といった面も考え得るのではないか。
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