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 教育関連三法案(学校教育法,地方教育行政法,教育職員免許法)について,昨日,委員会で決議され,本日,衆議院で可決される予定です。

<1>
 物事の進み方というのは,山に登るのに似ています。
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 上に上がっていくときは,とても苦しいですし,歩みも一歩一歩で少しずつになります。しかし,上がっていこうという「志」があるので,明るく頑張る気になります。
 これに対し,ちょっとつまづいて,下に転げ落ちていくときは,何も考える必要はありません。よほどふんばらないと止まりません。下に落ちれば落ちるほどスピードが速まります。気付いたときには傷だらけです。


 昨年末の教育基本法の改悪に続いて,
昨日の教育関連三法案の委員会可決の報に接し,
その拙速性に驚くとともに,転落一途だなあとつくづく感じました。


<2>
 5月8日には,当の衆議院の教育再生特別委で,参考人招致が行われました。
 そこで参考人として呼ばれた教育学会の大物である藤田英典先生(元東京大学教授,東大教育学部長で,政府の教育改革国民会議や中央教育審議会委員なども務めた方)は,次のようなことを言いました。(→衆議院の会議録より
「現在行われている改革は、1980年代から四半世紀続いてきたものであります。そういう四半世紀も続けてきた改革の中で、教育の安定性、学校の日常性が揺るがされ、教職員の多忙化や教育のゆがみがそこを促進することになっていないか。」
「そして、教育の管理主義的、成果主義的、市場原理主義的な評価、統制の拡大と強化は、教育の総合性とバランスをゆがめ、短期的成果を優先し、教育現場とその日常的実践を息苦しいものにし、ゆとりとおおらかさを奪うことにならないか。」
「これらの弊害が大きいものになったとき、取り返しのつかないようなものになったとき、一体だれが責任をとるのか。私は為政者がとるべきであると思いますが、そのときには、もしかしたらここにいらっしゃる多くの方は既に議員でなくなっているかもしれない。しかし、それでも皆さんがとらなければいけないんです。
 きっと,その場にいた国会議員の多くは,自分が責任を取らなければならない,などという意識は持ってないでしょうね。
 とりわけ,法案に賛成した与党議員は,「党議拘束があるから仕方ない。与党政党の一員として賛成しただけで,個人としては何とも言いようがない」というのが本音でしょう。

 本当に責任を取るべき方々は無責任ですが,その場の雰囲気に乗じて適当な「制度いじり」をした結果として,具体的に苦しむ人々はたくさん生まれます。
 きっと,今回の法律改正によって,
   ◆多くの子どもは,大事なことを何も学べず,心を毒され
   ◆多くの教師は,不必要なストレスを抱えて,心身を病み
   ◆地方の教育委員会は,いわれなき責任を取らされる

ということになるでしょう。
 こういう事態を「教育の荒廃」というのであって,荒廃させた責任者は,自らの愚行に気付かないまま,善人ぶって空疎に世を憂うのでしょう。
 参考人の声にさえ耳を傾けることができない立場のエライ方々にこそ,まず基本的な教育改革が必要だと思います。

<3>
 今回の法案は,何を変えるのか。
 大きな柱は3つあります。
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 一つ目は,教員の統制です。「教育免許更新制」「ダメ教員の追放」といわれている問題です。
 これについては,神戸新聞の記事(→こちらです)にもあるようで,たとえば兵庫県内だけでも
「約3万人の教職員のうち、02年度の精神疾患による休職者は21人。その後、03年度=39人,04年度=64人 05年度=78人と増加傾向にある。同課は休職に至らないまでも、潜在的に心の病を抱える教職員が少なくないとみている。」
とあるように,教員が徹底的に病んでいます。
 教員の生の声を聞く限り,その原因は,社会よりも,制度にあると言えます。これ以上,教員を病ませてどうするのでしょうか?

 2つ目の柱は,教育への国家介入権の拡大。「地方教育委員会への文科大臣の是正・指導権限の創設」です。
 これが,全体主義教育につながることは,賢明な方であれば,すぐに気付く事でしょう。
 この点については,過去のエントリー「生徒指導にゼロ・トレランス方式」をご参照下さい。
 全体主義教育を行うと,どんな風になるんでしょうか?想像力を働かせるまでもなく,好例がいくつも転がっています。
 戦前日本はもとより,お近くの北朝鮮などは,よく全体主義が行き届いています。ああいうふうにはなりたくないですね。
 アメリカ(ゼロ・トレランス方式のお膝元)でも,公教育現場では,星条旗への敬礼が義務づけられ,その結果,多くの兵士を増産できるようなシステムができています。
 決して論理の飛躍ではないでしょう。要は,どれだけ現実的に物事を想定できるかという問題です。

 第3の柱は,「学校教育法上の徳目事項の法文化」です。
 道徳を法律化する,などという発想自体,法律家の私にはナンセンスです。
 これは,「愛国心」の教育基本法の延長線上にありますが,教育勅語が生まれたときの経過とよく似ています。
 こちらの歴史情報をご覧下さい(→こちらより引用
「『勅語』を作成するきっかけは、地方長官会議の決議(『徳育涵養ノ義ニ付建議』)である。彼ら地方長官にとって一番恐れていたのは 「国会開設が目前に迫ったがゆえに一層拍車のかかった、自由民権運動に対する危機感だったといえる。」。津波のように次々おしよせて来る『民権運動の波』を如何にして避けるか。これが 最重要課題だったろう。それほど 『民権運動』は おおきな衝動を政府に与えたのである。」
 「まず国づくりは教育から」という思いは,誰でも考えつくことです。
 問題は,政府が躍起になって教育問題に手を出すというところに,何か意図があるということです。
 「道徳」を語る人には,その人自身に尊敬に値する「道徳」が備わっていなければなりません。「反面教師」ならいざ知らず,道徳を語るべき資格のない人が,「徳目」を語るときは,根源にウソがあると考えるのが,自然でしょう。

<4>
 ところで,今回の議案にも,付帯決議が付いています。

 国民投票法にも,18項もの付帯決議が付きましたが,付帯決議が付くというのは,本来,おかしいのです。
 付帯決議の必要がないように,ちゃんと議論をするのが本筋です。
 ちゃんと,原則どおりの議会運営ができないのに,土俵外の教育現場に一方的な原理を押し付けるのか。

 ただ,以下に引用するように,今回の付帯決議内容については,法律の上塗りをするような無意味なものが多いです。

 もっとも唯一見るべきことがらとして
 「学校教育を振興するため、教職員定数と教育予算の一層の拡充に努めること」
 というのがあります。
 教育の充実のために金を用意し,環境整備する,
というのが,唯一最大の政府の責務です
 それを,付帯決議なんかに追いやって,ちゃんと法制化できない無力さ,非力さには,これまた情けない限りです。
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 参考までに,この付帯決議を引用しておきます。
学校教育法等の一部を改正する法律案、地方教育行政の祖織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案及び教育職員免許法及び教育公務員特例法の一郎を改正する法律案に対する附帯決議

政府及び関係者は、本法の施行に当たって、次の事項について特段の配慮をすべきである。

一 副校長等の新たな職の設置については、その職務と責任に応じた処遇や定数の改善に努めること。

二 学校教育を振興するため、教職員定数と教育予算の一層の拡充に努めること。

三 大学が国際社会をはじめ広く社会に貢献できるよう、必要な支援に努めること。

四 文部科学大臣が地方教育行政の組織及び遅常に関する法律による是正の要求や指示を行うに際し、首長は教育委員会に対して支援等を行うこととすること。

五 知事が都道府県教育委員会に対し、学校教育に関する専門的事項について助言・援助を求める際には、私立学校と協議するものとし、教育委員会は私立学校の自主性を尊重すること。

六 私立学校が全国、全学校一律の法律上の義務を担保できるよう、知事部局に学校教育に関する専門的知識を有する者を配置するなど体制の充実を促すこと。

七 教員免許更新制の円滑な実施に向け、教員及びその他の免許状保持者等に対して制度の十分な周知を図ること。

八 免許状更新講習の受講負担を軽減するため、講習受講の費用負担も含めて国による支援策を検討するとともに、へき地等に勤務する教員のための講習受講の機会の確保に努めること。

九 大学における教員養成課程の見直しなど、養成・採用・研修を通じた教員の質の向上に努めるとともに、現職研修と免許状更新講習との整合性の確保、特に十年経験者研修の在り方について検討すること。

十 教員に優れた人材を確保するため、教員の顕彰制度の充実、人材確保法による教員給与の優遇措置の改善及びメリハリある教員給与体系の実現に努めるとともに、教員の多忙化の解消及び教育の充実のため、教職員定数の改善、事務の外部委託化並びに外部の専門家及び地域人材の活用に努め

十一 児童等に対する指導が不適切な教員の認定に当たって、任命権者による公正かつ適正な認定が行われるよう努めること。

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