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自然災害の被災者の生活の再建のために,
公的支援を行うことを定めた法律
  「被災者生活再建支援法」
は,阪神・淡路大震災がきっかけとなってできた法律です。

tyuryuufukkou.jpg この法律を作るとき,市民運動が大きな原動力となりました。
 市民運動の中心役を果たした小田実さんの新著,
   「中流の復興」(NHK生活人新書)
にも,そのときの経過が記されています。
(西宮居住の小田さんは,現在,末期ガンで闘病中ですが,精力的に執筆活動を行い,この6月に本著を刊行されています。)

 この法律ができたこと自体は,当時の国の復興政策に大きな風穴をアケルものとして,本当に大きな意義がありました。

 ただ,残念ながら,この法律は,不出来なところがあります。
   ◆生活の基盤となる「住宅」のための支出が認められていない
   ◆支給要件が無用に細かく複雑で,現実の救済に役立たない

ということです。

 来年,附帯決議に基づいて,被災者生活再建支援法の改正が予定されています。
seikatusaiken.jpg そこで,この機会に,上記の2点の問題を克服するために,日弁連で意見書を出すことにしました。

 私は,この意見書の原案を起案しました。

 日弁連の審議を経て,昨日この意見書を公表し,本日,執行されます。

 驚いたことに,この意見書が,毎日新聞の朝刊一面に取り上げられていました。
 
 たいへん地味な活動ですので,見向きもされないのではないかと諦念もあったのですが,こうして大きく取り上げられ,数ある追い風の一つになったのであれば,ありがたいことです。

 今回の意見書では,一般的に言われていることのほか,次の点を少し工夫してみました。

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ひとつは,憲法からの観点を盛り込んだこと,
もうひとつは,既に他の制度で,公的支援をやっているではないかという指摘,
さらにもうひとつは,阪神淡路の例を出して財政不安は克服できると指摘していることです

以下,意見書の全文を掲載しておきます。
今回の意見書の特色となるポイント部分を強調しておきます。
被災者生活再建支援法改正についての意見書
                       2007年(平成19年)6月19日
                       日本弁護士連合会

Ⅰ 意見の趣旨

 被災者生活再建支援法は、2004年(平成16年)改正の際、衆議院災害対策特別委員会及び参議院災害対策特別委員会において「居住安定支援制度等の充実を図るため、本法の施行後4年を目途として、制度の施行状況等を勘案し、制度の見直しを行うなどの総合的な検討を加えること」等の附帯決議がなされたことから、2008年(平成20年)に改正が予定されている。
 これを受けて、現在、内閣府に設置された「被災者生活再建支援制度に関する検討会」において改正内容についての検討が行われているが、この間に発生した2004年(平成16年)の集中豪雨・連続台風、新潟県中越地震、福岡県西方沖地震、能登半島地震等をはじめとする被災地での被災者生活再建支援法の運用状況などに鑑みて、次の点を改正すべきである。

1 住宅本体の補修費、建設費、購入費も支出の対象として認めるべきである。

2 支出要件の緩和をすべきである。



Ⅱ 意見の理由

1 住宅本体の補修費、建設費、購入費も支出の対象として認めるべきである。

(1) 被災者生活再建支援法3条は、「都道府県は、当該都道府県の区域内において被災世帯となった世帯のうち次の各号に掲げるものの世帯主に対し、自立した生活を開始するために必要な経費として政令で定めるものに充てるものとして、当該各号に定める額を超えない額の被災者生活再建支援金(以下「支援金」という。)の支給を行うものとする。」と規定し、被災者の「自立した生活を開始するために必要な経費」すなわち「支援金」の内容を、政令に委ねている。
 そして同施行令3条では、生活必需品購入費や、医療費、住居移転費・交通費などのほか、住宅解体費用、住宅ローンの利息、仮設住宅等の利用料などが定められている。
しかし、住宅本体自体の補修費、建設費、購入費については、法律にも政令にも規定されておらず、支出が認められていない。また、住宅の敷地(地盤)の補修費等についても、同様に対象外とされている。

(2) このように、住宅本体への支援金支出が除外されている理由は、「私有財産の形成に公費の支出は認められない」との考え方が根強いこと、及び、これを一旦容認すると、将来、東京などの大都市で大災害が発生した場合に財政的に運用不可能になると予測されているところにある、と一般に理解されている。
 しかしながら、上記のごとき除外理由は、合理的根拠を欠いていると言わざるを得ない。

① まず、そもそも「私有財産の形成に公費の支出は認められない」との考え方は、明文上の根拠があるわけではなく、その意味するところも一義的に明確ではない。仮に社会生活における全ての場面でかかる原則を徹底すると、私人への公費支出が大幅に制限され、社会保障をはじめ手厚く個人の権利を保障した憲法に反することにもなりかねない。憲法は、89条で公金の支出の制限を定め、宗教団体や公の支配に属さない慈善・教育等の事業への支出を禁じているが、私人への支出それ自体は禁じておらず、国民生活の安定を図ることが国家の責務であることを考慮すると、上記のような考え方は、災害復興の場面においては適合しないと言うべきである。

ア 実際、被災者生活再建支援法は、家財道具等の購入や、住宅ローンの利子補給などの支出は認めており、私的財産形成への公費援助は一定の範囲で既に実施されているのであるから、住宅本体にのみ支出できない、というのは理論的にも一貫しない。他の制度に目を向けてみても、耐震改修に対する公費補助、農地・農業に対する公費補助、まちづくり交付金の運用による私有住宅費への補助など、私有財産形成に関して公費が支出されている例は、かなり多数に及んでいる。そして、これら支出は、国政上も地方自治運営上も十分な効果をあげているところであり、このような公費支出が大変有効であることを裏付けている。

イ 住宅は、個人の私有財産としての性格を有するとともに、都市や街並みの重要な要素として地域における居住環境に影響を及ぼす社会的性格をも有している。我が国において、住宅政策は一貫して主要政策とされ、公営住宅の供給・住宅金融公庫の設立をはじめ、数々の住宅安定施策を採用してきたのも、住まいの公共性を前提としてきたからである。地域のまちづくりの最小単位が個々の住宅であることも言うまでもなく、それら住宅は、建築基準法という公法の諸規制下に置かれている。2007年(平成19年)4月1日には住生活基本法が施行され、国民の住生活の安定や向上の促進について、国や地方公共団体の責務が明らかにされたところであり、住宅の公共性は、ますます高まっているところである。まして、大災害によって被災した住宅の再建は、地域復興にとって大変重要な課題であり、被災住宅を再生しないと地域復興が成り立たないことは、多くの災害例で検証されている。阪神・淡路大震災では、住宅再建支援が不十分であった結果、復興全体に深刻な問題が次々に生じて復興の足かせになったが、他方、鳥取県西部地震では、住宅再建費用を支援したところ、過疎集落のコミュニティの崩壊を免れ早期復興につながったという報告がなされている。住宅再建のための支援が地域復興という公益目的のために大きく寄与していることが明かである。

ウ 2004年(平成16年)10月の新潟県中越地震、同じ年の連続台風被害において、住宅費への直接支援の必要性が強く叫ばれたことは記憶に新しく、本年3月に発生した能登半島地震でも同様の訴えがあり、この点は被災地に共通した要望であることが浮き彫りになっている。
 住宅や宅地が私有財産としての側面をもっているとしても、住宅の公共性にも着目するべきであり、とりわけ災害復興の場面においては、住まいの公共性・社会性が平時よりも格段に高まっているのであるから、このような住まいのために支援金を支出するのが法の目的に合致するものである。

② 住宅本体への支出を認めることによる財政的懸念については、確かに現実的課題として無視できない。
 しかし、それは、以下に述べるとおり、十分対応可能な課題である。

ア 本法施行前の平成7年1月17日に発生した阪神・淡路大震災の例で検討してみるに、約10万棟の家屋が全壊・全焼、約15万棟の家屋が半壊・半焼したので、仮に、全壊家屋に300万円、半壊家屋に100万円を支出したとしても、支出総額は4500億円となるに過ぎない。
 阪神・淡路大震災の被害総額は10兆円にのぼると推計されているが、災害復興のために国・県・市などが10年間に注ぎ込んだ総事業費の実績額は約16兆3000億円に達すると試算されており(兵庫県「阪神・淡路大震災復興10年総括検証・提言/復興資金-復興財源の確保」より)、4500億円は、その3%にも満たない金額である。住宅再建支援金の支出をしなかったことにより被災地再建に及ぼした影響の大きさを考え、上記事業費の一部を住宅本体への支出に向けていた方が、復興促進にかなり効果的ではなかったかとの意見が多く聞かれるところである。

イ 政府や首都圏内の自治体は、この10年内に強力に家屋の耐震化を進める行動計画を立てており、今後はそれによる災害被害の軽減も期待し得る。
 仮に首都直下地震で予想をはるかに上回る被害が発生したとしても、本法上は、被災者生活再建支援法人の基金から支出をするものであるから、それを超える支出を限定するなどして国家財政への大きな影響を抑えることが十分可能である。大都市における大規模災害を念頭に置くとしても、上記のような事情も考慮し、住宅本体に対する補修費、建設費、購入費についても支援金を支出できるようにすることが、本法の趣旨に沿った適切な対処といえるはずである。

ウ なお、本法上は、都道府県は基金の積み立て義務があるのに対し、国はかかる義務を負っていない(同法9条、18条)。この仕組みは災害対策基本法も同様である。確かに、本法は、都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を活用することを前提としているものの、いざ災害が発生したときには、国も都道府県と同額の補助金を支出する義務を負っている(同法18条)。しかるに、国は、都道府県のように「災害に対する備え」としての基金の積み立てを行っておらず、災害が発生してから予備費支出または国庫債務負担行為によってまかなう形をとっている。このような財政措置の仕組みでは、単年度の支出に抑制的にならざるを得なくなる。国としても「災害に対する備え」を十分に確保するのが相当であり、本法または災害対策基本法などに、災害対策のための基金の積み立て義務を課する仕組みを設けることが検討されるべきである。

(3) 以上のとおりであって、被害者生活再建支援法は、住宅本体・敷地に対する補修費、建設費、購入費についても支援金を支出するよう改正すべきである。

2 支出要件の緩和をすべきである。
(1) 被災者生活再建支援法では、2条2号で「被災世帯 政令で定める自然災害により、その居住する住宅が全壊した世帯その他これに準ずる程度の被害を受けたと認められる世帯として政令で定めるものをいう。」と規定し、3条1号では「当該世帯に属する者の内閣府令で定めるところにより算定した収入の合計額(次号において「収入合計額」という。)が五百万円以下である世帯」、同2号では、「収入合計額が五百万円を超え八百万円以下である世帯であって、その世帯主の年齢が六十歳以上であるもの(収入合計額が五百万円を超え七百万円以下である世帯にあっては、その世帯主の年齢が四十五歳以上六十歳未満である世帯を含む。)又は内閣府令で定める要援護世帯であるもの」と規定し、支出の要件を定めている。
 このように、支出対象を全壊または大規模半壊の世帯とし、さらに、年収要件と年齢要件を設けて一定限度の層に限って、支援金を支給するものとしている。

(2) しかし、このような支給要件の限定は、上記の「必要経費」の種類の限定と相俟って、被災地に無用な混乱を生じさせており、根本的に見直されるべきである。
 これまでの本法の運用状況をみると、支給基準を新設するなどして対応してきたが、国の全国一律の基準による制度運用の中で、不合理な対応を余儀なくされているものが少なくない。また、支給の要件を細かく定めたために、制度内容を被災者に説明するだけで大変な時間を要し、被災地の職員が多忙を極め、本来の復興業務に携われないという弊害も生じている。これまでの本法の適用実績や被災地のアンケートを見ても、支給要件に関する改善の要望が非常に多く、見直しは急務というべきである。
 本法施行後に発生した災害事例では、被災地自治体が、上乗せ制度だけでなく、要件を緩和する横出し制度を創設して、独自支援策を講じるのが通例となっている。本来、本法の支給要件が十分に合理的なものであったならば、このような被災地自治体の対応は必要なかった。被災地自治体が独自支援策を積み重ねたこと自体、本法の支給要件の定め方に欠陥があったものと言わざるを得ない。

(3) また、住宅の被害程度は全壊、大規模半壊、半壊、一部損壊の4つに区分され、全壊と大規模半壊にのみ支給するという仕組みになっているが、被害点数が1点違うだけで、支給額が大きく異なったり、支給の可否が異なったりするなど、被災者らは非常に強い不公平感を主張したり、被災地自治体も大量に被害認定のやり直しを求められるなど、大きな足かせを余儀なくされている。
 能登半島地震の際も、被災地自治体から「全壊と半壊で、給付金の可否が全く異ってくるのも不合理である。被災度の段階に応じて、給付金額も段階的に刻んでいくような形にするのが筋である。」との率直な意見も聞かれた。

(4) 以上を踏まえ、国の基準はある程度包括的なものにとどめ、被災地自治体に裁量権を与えるように改めるべきである。具体的には、被災者生活再建支援法3条の収入要件や年齢要件は撤廃し、前記の鳥取県西部地震における住宅再建支援の場合と同様に、被害の程度に応じて一律の支援金を支給することが検討されるべきである。
 併せて、支援金支給の手続き、特に被害の程度の判定手続きや提出を求められる書類の範囲などを簡素化するように検討すべきである。
                                 以 上


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