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兵庫県弁護士会の出した意見書です。
この件に関する弁護士会での議論の集大成ですので、ここに紹介しておきます。

なお、各自がインターネットを利用して意見を出す場合は,ここまで詳しく書く必要は全くありません。

短い言葉でもいいので(「第1弾」と「第2弾」をご参照ください。)、一つでも多くの声と思いが届けばよいです。

パブコメの送信先は、
 こちら→http://www.iijnet.or.jp/cao/bousai/opinion-fukkou.html
が便利です。


被災者生活再建支援制度に関する検討会中間報告に対する意見書


                    2007年(平成17年)8月22日
                       兵庫県弁護士会
                         会 長  道 上 明


 被災者生活再建支援法は、阪神淡路大震災における被災の経験から、被災者の自立的な生活再建を支援する制度の必要性が自覚され、1998年(平成10年)に成立した。その後、2004年(平成16年)4月の法改正によって「居住安定支援制度」が創設されるとともに、衆参両院の災害対策特別委員会において「居住安定支援制度等の充実を図るため、本法の施行後4年を目途として、制度の施行状況等を勘案し、制度の見直しを行うなどの総合的な検討を加えること」などを内容とする付帯決議が採択され、現在内閣府に設置された「被災者生活再建支援制度に関する検討会」において改正内容についての検討が行われている。
 2004年(平成16年)の法改正後、台風23号や新潟県中越地震、能登半島地震など、多くの自然災害において改正法が適用されてきたが、支援金支出対象の制限、年収・年齢要件その他細かい支給要件による制限、支給金額の不十分等々多くの問題点があり、未だ被災者の十分な救済からはほど遠いのが実情である。近時の新潟県中越沖地震をはじめ、大規模な自然災害が発生するたびに、被災地からは、真に被災者の要望に応えられるよう、支援のあり方を一刻も早く見直すべきだとの声があがっている。
 そこで当会は、阪神淡路大震災の被災経験をもつ単位弁護士会として、被災者生活再建支援法が、真に被災者の自立的な生活再建を可能とし、被災者に安心と希望を与える制度となることを願い、今般、「内閣府の被災者生活再建支援制度に関する検討会」によって発表された「被災者生活再建支援制度見直しの方向性について-被災者生活再建支援制度に関する検討会中間報告-」に対し、意見を述べるものである。


【意見の趣旨】

1、居住関係費の支給要件の緩和
 (1) 住宅本体への支出
   居住関係費の支出を、被災住宅の解体・撤去費やローン利子等の関連経費に限定せず、住宅建設費、購入費や補修費等の住宅本体の費用も支出の対象として認めるべきである。
 (2) 全壊住宅の補修費用等
   罹災証明において全壊と判定された住宅であっても、補修を行って使用を継続しうる場合には、住宅の補修費用並びに補修に係る撤去費用、ローン利子を支出の対象として認めるべきである。
 (3) 住宅所有者の弾力的判定
   親族間での住宅所有者の認定は、所有名義のみに拘泥せず、生活実態を勘案して弾力的に判定すべきである。
 (4) 住宅以外建物への支援
   支援金支出の対象を、住宅のみならず、事業用の店舗・作業場・倉庫にも拡大すべきである。また賃貸用住宅の賃貸人にも支援を拡大すべきである。
 (5) 地盤被害に対する支援
   自然災害による被害が地盤に及んでいる場合、住宅には直接被害が無くとも、地盤の修復費用等を支援金支出の対象として認めるべきである。

2、生活関係費の使途拡大
  生活関係費の使途は限定することなく自由化し、被災者の自律的判断に委ねるべきである。

3、支給上限額の引上げ
  現在法定されている支援金上限額は300万円であるが、これを住宅本体への支出等、改正の方向性を踏まえた適切な金額に引き上げるべきである。

4、支援対象世帯の拡大
 (1) 年齢要件の撤廃・年収要件の緩和
   年齢要件は撤廃し、年収要件は緩和して、一定の高額所得者以外は支援対象とした上、支給の基準については被災自治体の裁量権を認めるべきである。
 (2) 基準となる年収の見直し
   支援の要件となる年収は、前年度の年収ではなく、申請時点での最新の年収額を採用すべきである。

5、罹災証明の被害認定
 (1) 認定段階の精密化
   現在被災者生活再建支援法により支援金を受けられる被害程度は全壊・大規模半壊の2段階のみであるが、支援の格差を解消するため、被害認定の段階をより細かく規定すべきである。
 (2) 半壊世帯への支援
   半壊世帯も支援の対象とすべきである。
 (3) 床上浸水世帯への支援
   床上浸水世帯も支援の対象とすべきである。
 (4) 支援金支給事務の簡素化
   支援金支給の手続き、特に被害程度の判定手続きや提出を求められる書類の範囲などを簡素化すべきである。

6、改正法の遡及適用
  被災者生活支援法の改正法を2007年(平成19年)3月1日以降に発生した自然災害に対して遡及的に適用するべきである。

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【意見の理由】

1、居住関係費の支給要件の緩和
 (1) 住宅本体への支出について
   現在居住関係費の使途は、被災住宅の解体・撤去費やローン利子等の関連経費に限定されており、建設費、購入費や補修費等の住宅本体の費用は、支援金支出の対象外とされている。しかしながら、住居が全壊或いは大規模損壊し、住居を建て直すしかない被災者、安全な住居とするためには補修を必要とする被災者にとって、建設費、購入費や補修費の負担は最大の問題である。住宅本体への支援がなされなければ、真の意味での居住安定支援にはならない。
   この点国は、「住宅は個人財産であり、その保全も自己責任によるべきであって、税金による支援を行うべきではない」とし、「私有財産の形成に公費の支出は認められない」との立場をとってきた。
   しかしながら、大規模自然災害により住居に大きな被害を受けた被災者に、住宅本体への支援金を支出することは、憲法の保障する私有財産制と何ら矛盾するものではないはずである。私有財産制度とは、国が個人の財産権を保障し、国家権力がこれを恣意的に収用することを抑制する制度であって、自然災害により財産的被害を受けた被災者を国家が支援することとは何ら矛盾しないからである。
   また、憲法は、89条で公金の支出の制限を定め、宗教団体や公の支配に属さない事前・教育等の事業への支出を禁じているが、私人への支出それ自体は禁じておらず、むしろ国民生活の安定を図ることが国家の責務であることを考慮すると、「私有財産の形成に公費の支出は認めない」との考え方は、災害復興の場面においては適合しないというべきである。
   加えて、住宅は、地域社会において、住環境や景観を形成する要素として公共性を有することが明らかであり、住宅の再建は地域社会復興への第1歩であると言える。従って、住宅の再建をすべて自己責任に委ねることは、妥当とは言えない。
   また、住宅所有者のみへの資金提供となる点が、住宅非所有者との不公平を生じるのではないか、との指摘もあるが、借家人等にとっても住宅の早期再建が居住安定につながること、住宅再建等に一定の公共性が認められること等に鑑みれば、実質的平等の枠外に出るものではない。
   よって、建設費、購入費、補修費といった住宅本体の費用も支援金支出の対象に含めるべきである。そして、被災者の具体的必要性に応じ、住宅建設・補修の設計費への支援、住宅の設備等への支援、集合住宅の共用部分への支援にも支出対象を拡大していくべきである。

 (2) 全壊住宅の補修について
   現在、全壊と判定された住宅の補修に係る撤去費用やローン利子は、支援の対象外とされている。
   しかしながら、全壊判定は基本的に経済的価値で行われているため、全壊判定とされた住居のなかにも構造的には補修で済む場合は考えられる。現に被災地では多くの全壊住宅が補修によって維持されている。
   維持できる建物は可能な限り補修によって維持することが、コスト面や、早期の居住安定の見地からいっても被災者の要望にかない、また建物が一定の公共性を有することからも、補修によって建物を維持することには合理性がある。
   よって、全壊と判定された住宅の補修に係る撤去費用やローン利子はもちろん、前記の通り補修費用そのものへの支援も対象とすべきである。

 (3) 住宅所有者の弾力的判定について
   現在、子どもが親名義の家に居住して被災した場合、子どもは非所有者扱いで、居住関係費の上限額は2分の1であり、被災した親の住宅を被災していない子どもが再建した場合は、子どもは被災者でないので対象外とするとの扱いがなされている。
   しかしながら、このような扱いはあまりに硬直的であり、実情に沿った生活の再建支援につながらない。親子関係など一定の親族間では住宅所有の有無、被災の有無を弾力的に解するべきである。

 (4) 住宅以外建物への支援について
   現状では、住宅部分のみが支援の対象であり、事業用の店舗、作業場、倉庫等は対象外である。
   しかしながら、被災者の自立的な生活再建を可能にするためには、生業たる店舗、作業場の再建が不可欠であり、これらの再建なくして、生活の再建はあり得ない。また、地元商店街等の復興は、住民生活に不可欠であり、店舗、作業場の再建を支援することで、地域社会の復興にもつながる。
   この点、災害救助法23条1項7号に「生業に必要な資金、器具又は資料の給与又は貸与」を行う旨定められているものの、事実上これらの給与又は貸与は行わない運用がなされてきており、このような法運用の実態を是正する意味でも、生活再建支援法によって生業たる店舗等の再建を支援することが強く求められる。
   よって、支援金支出の対象として、被災者が営む個人事業又は小規模会社の店舗、作業場、倉庫も含めるべきである。
   また、賃貸住宅については、あくまでも居住者が支援対象で、賃貸人は対象外とされている。
   しかしながら、民間賃貸住宅の再建がなされなければ賃借人の住まいも確保できなくなり、結局のところ多くの被災者を窮地に追い込み、地域の復興も阻害する結果になりうる。
   よって、賃貸用住宅に対する賃貸人への支援にも対象を拡大するべきである。

 (5) 地盤被害に対する支援について
   現状では、被害認定の対象は住宅被害に限定されており、地盤被害の修復に関する経費は支援の対象外とされている。
   しかしながら、大規模な地震が発生したときは、地盤そのものに大きな被害を生じることがあり、住宅に直接の被害がなくとも、そのままでは居住できない場合や、土砂崩れなど、隣接地に悪影響を及ぼす場合は少なからず発生する。地盤に大きな被害が生じている場合、地盤被害の修復を行わなければ、生活の再建はそもそも不可能である。被災者生活再建支援法の目的が、生活の再建と居住安定の支援を目的とする以上、支援の対象を住宅被害に限定しなければならない理由はなく、地盤被害の修復に関する経費も支援金支出の対象として認めるべきである。

2、生活関係費の使途拡大
  現在、被災者生活再建支援法に基づいて支給される生活関係費の対象は、家財道具等の生活に必要な物品、災害による負傷等の医療費、引越費用に限定されている。しかしながら、被災直後は生活費にも事欠く事態があり得るし、そもそも現在個人の生活スタイルは多様化しており、当面の生活の再建に何が最も必要かは、被災者個々人によって異なるのであるから、生活関係費の対象を上記のように限定することに合理性があるとは思われない。
  よって、生活関係費の使途は基本的に自由化すべきである
  また、支出対象となる家財道具等の生活に必要な物品の範囲も現在は限定列挙されているが、やはり限定すべき合理性は認められない。よって、限定列挙は排除し、被災者個人の自律的判断に委ねるべきである。

3、上限額の引き上げについて
  現在法定されている支援の上限額は300万円であるが、前記のとおり、支援の範囲を住宅本体の費用にまで拡大するべきであり、これに伴い、支援金額の上限も引き上げるべきである。
  なお、上限額については、住宅の再建について少なくとも平均1300万円程度の費用が必要となるとの試算があることから、650万円程度とするのが望ましい。

4、支援対象世帯の拡大について
 (1) 年齢要件の撤廃・年収要件の緩和
   現在、支援金支出の要件として、細かい年齢・年収要件が定められているが、これらの要件の設定によって、本来支援を必要とする世帯に支援金が給付されないという事態が生じている。例えば40歳で年収500万円を超えると、支援の対象とはならないのである。
   しかしながら、支援の必要性の有無や程度が、年齢に応じて変化するとは必ずしも言えない。むしろ、働き盛りの若い年代層は、住宅ローンや子育て等の負担を抱え、支出も多いのであるから、若い世代への支援を拡大する必要があるとも言える。
   また、このような支給要件の限定は、必要経費の種類の限定とも相俟って、被災地に無用な混乱を生じさせており、根本的に見直されるべきである。これまでの本法の運用状況を見ると、国の全国一律の基準による制度運用の中で、被災地の自治体が不合理な対応を余儀なくされたり、支給要件を細かく定めたために、制度の内容を説明するだけで大変な時間を要するという弊害も生じている。
   よって、個々の被災者の被害の程度や生活困窮の程度に応じた支援を行うという見地から、年齢要件は撤廃し、年収要件は緩和して、一定の高額所得者以外は支援対象とした上、支給の基準については、被災者と直に接する被災自治体に裁量権を与えるべきである。
 (2) 基準となる年収の見直し
   また、支援の要件となる年収は、現状では前年度の年収が基準となっているが、現に生活に困窮する被災者の生活再建を支援するため、災害による失業や営業停止などで所得が減少することを可能な限り反映させるべきであり、申請時点での最新の年収額を採用すべきである。

5、罹災証明の被害認定について
 (1) 被害認定段階の精密化
   現状は、住宅の被害程度は全壊、大規模半壊、半壊、一部損壊の4つに区分され、支援金支出の対象となる被害程度は全壊・大規模半壊の2段階のみであり、全壊世帯には居住関係費の上限が200万円、大規模半壊の世帯には居住関係費が100万円支給されることになっている。
   しかしながら、わずか1点の被害点数の違いで支援に100万円もの違いが出るという制度設計は合理的ではなく、被災者間でも不公平感が生じかねない。
   よって、支援金支出の対象となる被害認定の段階をより細かく規定し、支援の格差を解消するよう改めるべきである。
 (2) 半壊世帯への支援
   現状は、単なる半壊は、そもそも支援の対象外である。しなしながら、半壊であっても安定した居住を確保するため、補修等の対策を講じる必要性があることに変わりはないのであるから、半壊世帯に対する支援は必要である。従って、半壊世帯に対しても支援金の支出を認めるべきである。
 (3) 床上浸水世帯への支援
   台風等の風雨を伴う自然災害の場合、住宅の構造そのものには問題はなくとも、床上浸水により家財道具が滅失したり、住宅に臭気が残ったり、衛生上の問題が生じたりすることがある。このような床上浸水の被災者も、生活基盤に著しい被害を受けており、住宅補修等の措置をとる必要性があることに何ら変わりはない。よって、住宅そのものが全壊、大規模半壊の状態にまで至っていなくても、床上浸水世帯にも支援を拡大すべきである。
 (4) 支援金支給事務の簡素化
   被害認定や支給要件の複雑さから、支援金支給事務そのものがかなり複雑化しており、一般の被災者にとって、支援金を受給することを困難にしている。
   よって上記の点に併せて、支援金支給の手続き、特に被害程度の判定手続きや提出を求められる書類の範囲などを簡素化すべきである。

6、改正法の遡及適用について
  検討会が発足し、第1回検討会が開催された2007年(平成19年)3月1日以降、能登半島地震(同年3月25日)、台風第4号被害(同年7月中旬)及び新潟県中越沖地震(同年7月16日)と、立て続けに大規模な自然災害に襲われた。これら自然災害による被災地の被害はいずれも甚大であり、被災者は住居を失い生活再建の目処が立たないなど過酷な状況を強いられている。また、特に高齢者や子どもなど、援護を必要とする被災者は、長引く避難所生活によって健康状態が悪化し、また精神的にも不安定な状態に追いやられている。
  被災者生活再建支援法は、検討会の意見とりまとめを踏まえた上で、2008年(平成20年)春の国会で審議される予定であるが、このままでは改正された被災者生活再建支援法は、上記3つの大規模な自然災害には適用されないこととなってしまう。
  そこで、当会としては、改正法をこれら3つの自然災害にも遡及適用すべきであると考える。
  そもそも現在検討されている改正内容は、被災者への支援をより充実させ、事務の簡素化を図るところに目的があるから、改正前に生じた大規模災害に改正法を遡及適用することに何ら不都合はなく、むしろ改正の趣旨に合致する。しかも、平成16年に本法が改正された際、衆参両院の災害対策特別委員会において「居住安定支援制度等の充実を図るため、本法の施行後4年を目途として、制度の施行状況等を勘案し、制度の見直しを行うなどの総合的な検討を加えること」などを内容とする付帯決議が採択されており、被災者の生活再建支援の充実を目的とした改正を行うことが当初から予定されていたのであるから、立て続けに発生した上記3つの自然災害に改正法を遡及適用し、過酷な状況に置かれている被災者を支援することは、上記付帯決議の趣旨にも沿うはずである。
  また、遡及適用を行うについては、法適用の公平性の観点からの配慮も必要となるが、平成16年改正後明らかとなった問題点を残したまま上記3つの災害に現行法をそのまま適用することこそ、硬直的な公平原理に基づくものというべきであり、妥当とは言えない。法改正に向けての検討作業が開始された後に発生した自然災害につき、改正法を遡及適用することには、十分な合理性が認められ、国民の理解も得られるはずである。
                                 以 上
 
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