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 先週の金曜日に,兵庫県弁護士会の総会が開かれて,「日本国憲法の基本理念を堅持する宣言」が,決議されました。

 誤解のないように申し上げておくと,決して“9条を守ろう”というメッセージではありません。
 また,単純に“護憲だ!”と訴えている内容でもありません

 弁護士にも改憲論者はたくさんいます。
 しかし,改正を行うとしても,絶対に守らないといけない「核」の部分があるわけで,そこだけは絶対にまもっていこう!という宣言なのです。

 福田内閣になってから,憲法論議は低調になってきているのが気になります。
 改憲論者がおとなしくなったからだろうと思いますが,こういうときこそ,憲法をまもろうという立場の人々が大きな声を上げていく必要があるでしょう。

 以下,宣言の全文と,その理由の全文を引用しておきます。
 なお,強調部分は,津久井によるものです。

    日本国憲法の基本理念を堅持する宣言

 日本国憲法ができて60年がたちます。今、この憲法を改正しようという議論が高まっています。
 兵庫県弁護士会は、思想信条を越えた専門法律家団体として、2005年11月に日本弁護士連合会が行った「立憲主義の堅持と日本国憲法の基本原理の尊重を求める宣言」を全面的に支持します。そして、憲法改正を議論する場合にも、次の二点をけっして忘れてはならないと考えます。
 第一に、憲法は、国民のために、国民の権利・自由が、権力によって抑制されたり侵害されたりすることのないように、国民を守るものとして、歴史的に確立されてきたということです。これが立憲主義の基本であり、逆に言えば、この立憲主義無くしては民主主義国家とは言えないのです。
 第二に、日本国憲法の根本理念として
① 政治を決める根源的な力は、国民のみに由来するということ(国民主権主義)
② 個人の基本的人権をあくまで尊重するということ(基本的人権尊重主義)
③ 平和を守るため、戦争を放棄すること(恒久平和主義)
の三つの基本原則は、憲法の改正としては許されない
ということです。憲法改正を考える場合には、この三原則から出発すべきで、これらを変更する場合は、もはや「改正」とは言えないのです。
 日本国憲法は、改正規定をもっていますから、改正の議論はあり得ます。しかし、以上の二点は、憲法改正にあたっても、大前提となるものであり、これを無視しての「改正」はあり得ません。思想的、政治的には、さまざまな立場と意見があるでしょう。憲法改正に賛成の立場も、反対の立場もあるでしょう。しかし私たちは、法律家として、賛否どちらの立場をとるにしても、これらの点だけは忘れてはならない、侵してはならない、と考えます
 基本的人権を「公益及び秩序」で制約できるとの条文を盛り込むことは権力の座にある人たちが守りたいと考える利益と秩序のため、個人の自由や権利を制約してもよいという根拠にされる心配が大いにあります。今の憲法の規定にある「公共の福祉」が、人権間の調整の役割を担っているのとは質的に異なるのです。
 また戦争こそは最大の人権侵害、環境破壊です。戦争のない国際社会を築いていこうとする恒久平和主義は、我国が戦争をせず、戦争にまきこまれないという役割を果たしてきたもので、これを決して後退させてはなりません。9条改正が必要かどうかは、この原則を守り、慎重かつ十分な国民的議論を重ねて判断されるべきです。
 憲法改正を議論するときには、「憲法」は国民を守る砦であるという歴史的使命と役割を十分に認識し、日本国憲法の三つの基本原則が堅持されなければなりません。
私たちは、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とし、憲法と法にもとづいて活動すべき弁護士の団体として、以上のことを心から訴えます。

      2007年(平成19年)10月12日
                           兵庫県弁護士会
                               会長  道 上   明

   宣 言 の 理 由

1 日本国憲法は、1947年5月3日に施行されて、60年がたちました。
憲法改正の論議については、2005年に衆参両議院の憲法調査会の最終報告書が出され、同年には自民党の新憲法草案が出され、他にも、改憲や護憲等、多くの意見が出ています。
  私たち弁護士、弁護士会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を目指して、活動しています。その活動にあたって、基礎となるよりどころは、いうまでもなく法律であり、その根本を規定しているのが憲法です。
  私たちは、思想信条や政治的立場はさまざまですが、法律家としてのプロフェッショナルとして、憲法改正を論じるときに忘れてはならないことを、前提として訴えます。
  この憲法のあるべき姿を考えるとき、改正の議論をするにあたっても、憲法は何のために、誰のためにあるのかという点を、基本的な視点としなければなりません。私たちは、改めて憲法とはどのようなものか、日本国憲法の基本原理とはどのようなものか、憲法改正論議において何が必要であるのか、その理解を深め、国民的理解が得られることが重要だと考えます。

2 近代から現代にいたる歴史の中で、国家と国民との関係、係わり方が、立憲主義という基本原則として確立され、これが民主主義国家では憲法として規定されるにいたっています。
 日本国憲法における立憲主義の核は、法の支配と個人の尊重の理念にあります。法の支配は、国家の権力を法によって規制することであり、憲法や法は、国家の権力、政府の権力よりも、より上位にあるものとされています。これが国家の根源的なあり方を定める憲法として結実され、憲法が法の中の法、基本的な法と位置づけられ、国民の権利・自由の保障を実現しようとしているのです。憲法による権力の抑制・規制は、個人の尊重の原理、つまり国民の権利・自由を、権力の濫用から守ることに目的があります。
 憲法が誰のためにあるのか、と言えば、それは国民のためにあるのです。専制国家ではなく民主主義国家だから、もはやそれは違うのだ、と言うならば、それは歴史と法とを無視するものというべきでしょう。民主主義国家とは、国家の権力濫用を、憲法によって戒め、制限できる国家でなくてはなりません。

3 日本国憲法は、法の支配に徹した立憲主義の基本原理をとっており、具体的には、①国民主権主義、②基本的人権尊重主義、③恒久平和主義の3つが原則として規定されています。
  この3つの基本原則は、憲法改正を制約するもので、この基本原則を損ない、あるいは後退させる改正は、現憲法の「改正」としては許されません。改憲の問題を考えるにあたって、私たちはこの3つの基本原則から出発する必要があります。

4 改憲論の中には、人権を規制する新たな原理を持ちこもうという考え方があります。例えば、自民党の新憲法草案の中にも、国民の責務として「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う」とされ、「個人の尊重等」の案文では、「公益及び公の秩序に反しない限り」とする限定をつけて、人権が尊重されるものとされています。
 しかし、本来国民の権利・自由の保障について制約となり得るのは、他者の権利・自由と衝突する場合に備え、人権そのものに内在する制約原理としての「公共の福祉」という概念です。この公共の福祉論は、その解釈による制約の幅はあるものの、これはあくまでも人権相互間の調整ということが基本にあるのです。
 これを「公益及び公の秩序」というような文言におきかえることは、人権間の衝突の調整ということではなく、公、つまり国等の権力行使の必要の前に、国民の権利・自由が当然制約されるという結果をもたらすおそれがあります。ひいては、憲法が国民の権利・自由を保障するために権力を抑制、規制するという立憲主義の要請に反するおそれがあります。

5 憲法前文には、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する」とあり、日本国憲法制定の基本理念が示されています。
  日本国憲法における恒久平和主義は、前文に謳われているとおり、悲惨な戦争の惨禍という大きな犠牲を払い、その反省と教訓のもとに、国民の権利・自由が保障されるには平和が不可欠であること、平和が維持される必要があることが謳われています。また、平和のうちに生存する権利が、重要な人権の1つであることも謳われています。
 第二次世界大戦の犠牲者は、民間人も入れて5,000万人をこえると言われています。我国も210万人の犠牲者を出したとされています。戦争は人の生命という最も根源的な価値を大量に奪うものであって、戦争こそは最大の人権侵害であり、また環境破壊であるということが、銘記されるべきでしょう。
 このような日本国憲法の恒久平和主義は、世界に先駆たる歴史的価値を有すると共に、我国をこの60年間、戦争をせず、戦争にまきこまれないため、砦としての役割を果してきました。
 日本国憲法の、平和のうちに生存する権利の保障と相まった恒久平和主義は、誰のために憲法があるのかという視点からも、堅持される必要があります。9条や前文の改正の必要性と理由の正当性については、この点からの十分な検証が必要です。また国際協調主義の要請、あるいは国際貢献という課題は、日本国憲法の3つの基本原則と調和し得るものとして位置づけられる必要があります。

 私たちは、訴えます。憲法改正を論議するとき、いかなる立場に立とうとも、憲法の基本原則を逸脱してはならないということを。そして、国民のための憲法という基本を侵してはならないことを。

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