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 生活保護の水準を引き下げることになるとのこと。
 その理由は,生活保護費が高いと「勤労意欲をそぐおそれがある」とのこと。
 これ,マ・チ・ガ・イです。絶対に発想がサカサマでオカシイです。

 日経新聞の11月20日の記事です。
生活保護引き下げ・厚労省方針

 厚生労働省は20日、生活保護額のうち食費など生活扶助額を引き下げる方針を固めた。現在の生活保護の水準が、保護を受けずに働いている勤労層の生活費を上回り、勤労意欲をそぐ恐れがあると判断した。

 有識者による同省の「生活扶助基準に関する検討会」は同日、食料費など必要な生活費の調査結果を、生活扶助額を見直す基準に位置付けることで合意した。

 このたび兵庫県弁護士会でも
   「安易かつ拙速な生活保護基準の引き下げに反対する声明」
というのを出しました(後で引用しておきます)。
 その中でも触れているように,生活保護基準というのは,単に生活保護世帯の生活に影響するのにとどまらず,「地方税の非課税基準」、自治体によっては「国民健康保険料の減免基準」などに直接結びついています。
 それだけでなく,労働者の最低賃金を決める中央最低賃金審議会でも,生活保護水準を参考にしているとのことであり(→ここで「小泉首相の内閣参質一五九第一四号平成16年5月7日付答弁書」を見ることができます),実際の関係としては,
   最低賃金 < 生活保護費
になっているというわけです。

 なんのことはありません。「働く意欲を高めたい」というのであれば,まず,
   最低賃金 > 生活保護費
となるようにすればよいだけではありませんか。

生活保護費の引き下げは,単に「国の財政が苦しい」からでしょう。
それを主たる理由に据えればよいのに,ヘンな理由を付けるからオカシイのです。

で,国の財政を豊かにするには,「負のスパイラル」を作出してはいけません。

 生活保護費の引き下げ
    ↓
 労働賃金自体の引き下げ
    ↓
 ワーキングプアの増大
    ↓
 低所得者層の増大,国民消費力低下
    ↓
 景気低迷
    ↓
 国家財政の低迷


という流れをどこかで打ち止めにしないといけないわけですが,厚生労働省の視点は,そういう全体像を見ているのでしょうか?はなはだ疑問です。

賃下げで企業利益を高めるという経済政策の一辺倒だと,消費力が低下し,国内経済力が空洞化するのが心配です。

いずれにしても,国会のチェックも通さず,厚生労働省の一部署だけで,こんなに大きなことを決めてしまうのは,国家経済政策的見地から見て間違っていると思います。

 以下,兵庫県弁護士会の出した
「安易かつ拙速な生活保護基準の引き下げに反対する声明」
を以下引用します。
 強調部分は津久井によるものです。
安易かつ拙速な生活保護基準の引き下げに反対する声明

 厚生労働省は、本年10月19日、学識経験者によって構成される「生活扶助基準に関する検討会(第1回)」(以下「検討会」という。)を開催した。同省のホームページで検討会の設置と開催が発表されたのは同月16日であり、それから僅か3日後の突然の開催であった。その後、10月30日に第2回検討会が開かれ、11月8日には第3回検討会が予定され、「平成20年度予算編成を視野に入れて結論が得られるよう検討する。」こととされている。

 厚生労働省のホームページで公表された第1回検討会の議事次第及び配付資料によれば、上記検討会の趣旨は、平成18年7月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006」が「生活扶助基準について、低所得世帯の消費実態等を踏まえた見直し」及び「級地の見直し」を行うことを基本方針とし、「早急に見直しに着手し、可能な限り2007年度に、間に合わないものについても2008年度には確実に実施する。」ものとしていることを受けたものであり、それゆえ、期限を区切って、2008(平成20)年度予算編成に間に合うように検討会の結論を得ることが至上命題とされているのである。

 生活保護基準は、生活保護法8条に基づき厚生労働大臣が定めるものであるが、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準であって、国民の生存権保障に直結する重大な基準である。

 ところが、上記第1回検討会の配付資料によれば、「生活扶助基準は、一般国民の生活水準との関連においてとらえられるべき相対的なもの。」であり、「具体的には、年間収入階級第1・十分位の世帯の消費水準に着目することが適当。」とされており、厚生労働省が、生活保護を受給していない一般低所得者層(全世帯を収入の多い順に並べて十の階級に分けた場合に最も少ない階級に属する世帯)の消費支出統計と現行生活保護基準とを比較し、その均衡を図るとして、現行生活保護基準の引き下げを目指していることは明らかである。

 昨年10月の第49回人権擁護大会で日本弁護士連合会が採択した「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人の尊厳に値する生存を実現することを求める決議」が指摘するとおり、わが国では違法な窓口規制が広汎に行われているため生活保護の捕捉率が極めて低く、生活保護基準以下の収入で生活する世帯が多数存在する。かかる世帯の消費水準との均衡を理由として生活保護基準を引き下げることは、「負のスパイラル」として、生存権保障水準を際限なく引き下げていくことにつながりかねない。

 また、生活保護基準の引き下げは、現に生活保護を利用している人の生活レベルを低下させるだけでなく、一般低所得者層の生活全体にも大きな影響を与える。すなわち、生活保護基準は、介護保険の保険料・利用料、障害者自立支援法による利用料の減額基準、地方税の非課税基準、公立高校の授業料免除基準、就学援助の給付対象基準、また、自治体によっては国民健康保険料の減免基準など、医療・福祉・教育・税制などの多様な施策の適用基準にも連動している。それゆえ、生活保護基準の引き下げは、これらの一般低所得者層施策が受けられなくなる層を拡大することを意味する。

 このように、生活保護基準の引き下げは、現に生活保護を利用している人だけでなく、わが国の低所得者層の生活全般に直ちに影響を及ぼす極めて重大な問題であるから、生活保護基準に関する議論は、十分に時間をかけて慎重になされるべきである。また、こうした議論は、公開の場で広く市民に意見を求めた上、生活保護利用者の声を十分に聴取してなされるべきである。

 当会は、厚生労働省及び「検討会」に対し、生活保護利用者の声を十分に聴取し、徹底した慎重審議を行うことを強く求めるとともに、安易かつ拙速な生活保護基準の切り下げには断固として反対するものである。

                         2007(平成19)年11月6日
                            兵庫県弁護士会             
                            会 長   道  上     明
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