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 兵庫県弁護士会では,韓国籍の会員(弁護士)を,家事調停委員の候補者として推薦した。
 2名とも人格・識見ともに優れた,極めて有能な弁護士であり,本人に何らの問題もない。
 しかし,神戸家庭裁判所は,この2名の任命上申を拒絶した。

 兵庫県弁護士会としては,このような事態に遭遇するのは2度目だ。

 いろいろ議論はあるかも知れないが,少なくとも裁判所の司法行政は,法律解釈として非常に限定的・狭小的で,開かれた共生社会にそぐわないことは間違いない。

 弁護士会は,去る12月5日付で緊急に「上申書」を発し,昨日(10日),これを公表した。

 以下,その全文を引用する。
               兵弁総発第322号
                     2007年(平成19年)12月5目
最高裁判所
 長官 島 田 仁 郎 殿
神戸家庭裁判所
 所長 赤 西 芳 文 殿
                       兵庫県弁護士会
                           会長 道 上  明

                 申 入 書

第1 申し人れの趣旨
 1 神戸家庭裁判所は、兵庫県弁護士会が家事調停委員候補者として推薦した韓国籍の会員2名について、最高裁判所に任命の上申をしないとの取り扱いを直ちに撤回し、任命の上申をするよう求める。
 2、最高裁判所は、調停委員が「公権力の行使にたずさわる公務員に該当する」との取り扱いを変更し、直ちに外国籍調停委員の任命を認める扱いに変更するよう求める。

第2 申し入れの理由

1、2007年(平成19年)10月4日、兵庫県弁護士会(以下、F当会」という)が、神戸家庭裁判所からの家事調停委員推尊依頼に対し、韓国籍の会員2名を候補者として推薦したところ、同年11月20日、神戸家庭裁判所から「調停委員は、公権力の行使にたずさわる公務員に該当するので、日本国籍を必要とする。事前に最高裁に確認したが従前の取り扱いと変わっていないということであったので、調停委員として推薦された外国籍の会員については、最高裁に任命の上申をしないこととなった。」との連絡を受けた。
  神戸家庭裁判所は、2003年(平成15年)においても、当会から韓国籍の会員1名を調停委員に推薦した際にも同様の回答をし、最高裁への上申をしなかった。これを受けて、近畿弁護士会連合会は、2005年(平成17年11月開催の第27回近弁連大会において、「外国籍者の調停委員任命を求める決議」を採択し、最高裁に外国籍の者も調停委員に任命するよう求めたにもかかわらず、上記決議を真摯に検討することなく、従前と同じ取り扱いとしたのは、極めて不合理かつ不当であり、遺憾というほかない。

2、そもそも、民事調停委員及び家事調停委員規則(以下、「調停委員規則jという)は、調停委員の採用について、第1条(任命)「民事調停委員及び家事調停委員は、弁護士となる資格を有する者、民事若しくは家事の紛争の解決に必要な専門的知識経験を有する者又は社会生活の上で豊富な知識経験を有する者で、人格識見の高い年齢四十年以上七十年未満の者の中から、最高裁判所が任命する。ただし特に必要がある場合においては、年齢四十年以上七十年未満であることを要しない。」と規定し、また、同第2条では、欠格事由を定めているが、ここでも国籍等を欠格事由とする規定はない。すなわち、法律にも最高裁判所規則にも、民事調停委員および家事調停委員について、国籍を要求する条項はない。
  最高裁判所の取り扱いはいわゆる「当然の法理」に基づくものと考えられるが、最高裁の事務担当者は、①調停委員が調停委員会の構成員として、その決議に参加すること、②調停調書の記載が確定判決と同一の効力を有すること、③調停委員会の呼出、命令、措置には過料の制裁があること、④調停委員会は、事実の調査および必要と認める証拠調べを行う権限等を有していること、などを根拠に、調停委員が「公権力の行使または国家意思の形成への参画にたずさわる公務員に該当する」という。仮に国民主権原理等に基づき一定の公務員について日本国籍が要求されることが認められるとしても、法律の定めなく「公権力の行使または国家意思の形成への参画にたずさわる公務員」という広範な範囲の公務員への就任について、その具体的な職務内容を問題とすることなく日本国籍者と外国籍者につき差別的取扱いを認める「当然の法理」の不当性は明らかであり、「当然の法理」を、調停委員から外国籍者を排除することを正当化する根拠として認めることはできない。調停委員から外国籍者を排除することができるか否かは、調停制度の目的、調停委員の役割、調停委員の権限等を総合的に考慮して、外国籍者を調停委員とすることにより、何らかの具体的客観的な支障があるのかという視点から検討されなければならない。

3、外国籍調停委員の採用を積極的に推進すべき理由
(1) 調停制度の趣旨および調停委員の役割
  調停制度の目的は、市民の間の民事・家事の紛争を、当事者の話し合いおよび合意に基づき、裁判手続きに至る前に解決することにある。目本における裁判外紛争解決手段(ADR)の典型の一つと位置付けられている。そして、調停委員の本質的役割は、専門的知識もしくは社会生活の上での豊富な知識経験を活かして、当事者の互譲による紛争解決を支援することにある。日本の社会制度や文化、そこに住む市民の考え方に精通し、高い人格識見のある人であれば、国籍の有無にかかわらずこのような役割を果たすことができるのは明らかである。調停委員規則も、「弁護士となる資格を有する者、民事若しくは家事の紛争の解決に必要な専門的知識経験を有する者又は社会生活の上で豊富な知識経験を有する者で、人格識見の高い年齢四十年以上七十年未満であること」を調停委員として任命される資格として定めており、国籍の有無を問題にするという示唆はまったくない
  特に、弁護士については、具体的な専門等が問題とされておらず、法律紛争の解決を専門とする者として当然に紛争解決に必要な専門知識を有するものと位置付けられており、国籍が問題となる余地はない。すなわち、外国籍者が調停委員に就任することが調停制度の趣旨に反しているとか、調停制度運用の支障となるという具体的客観的な事情は一切認められない。弁護士たる資格を有する外国人は、日本国籍保侍者と同様、日本の司法試験に合格し、司法修習を終了した上で弁護士登録した者なのであって、その結果獲得した資格に基づく活動の制限を可能とするには、その者に不利益を課すのを正当化するだけの合理的な理由があることが必要である。また、弁護士資格を有しない外国人であっても、紛争解決に必要な専門知識をもつ者、もしくは日本社会の構成員として、長年日本で過ごし、紛争解決に有益な社会経験を有し、かつ人格識見の高い人であれば、客観的に調停委員としての職責を果す能力があるのは明らかである。そして、公的機関や私企業での第1の人生を満了した後、第2の人生として、社会的貢献の可能な調停委員の職を選び、活躍する人が多いという現実に鑑みれば、同様の立場にある外国籍者に対しても、平等に調停委員就任の道が開かれるべきである。

(2) 調停委員の職務権限について
  調停調書は確定判決と同一の効力を有するが、日本国籍を有しない、仲裁人の下しか仲裁判断や、外国裁判所の下した外国判決も確定判決と同一の効力を認められている(日本における執行のためには、日本の裁判所における執行判決もしくは執行決定を得る必要があるが、日本の裁判所が執行を拒否できる事由は極めて限定されている)。調停調書の記載が当事者の合意に基づくものであるのに対して、仲裁判断や外国判決は、当事者の承諾の有無にかかわらず、仲裁人もしくは外国裁判官の一方的な判断を示すものであるから、当事者の権利義務に対する影響の大きさは、調停調書より直接的かつ重大ともいえる。すなわち、調停調書が確定判決と同一の効力を有するということが、調停委員の職務が、「公権力の行使」的な側面を有していることの根拠となるとしても、仲裁判断や外国判決とのバランス上、外国籍者を調停委員から排除する根拠とはなり得ない。
  調停委員会の呼出、命令、椎茸には過料の制裁があることは、当該呼出、命令、措置の「公権力の行使」的な側面を示すものではある。 しかしながら、これらの呼出、命令、措置はいずれも、調停制度による紛争解決をより実効性の高いものとするための付随的な処分に過ぎない。従って、このような過料の制裁制度を根拠に、調停委員の職務を全体として「公権力の行使」であると位置付けるのは、まさに本末転倒である
  また、事実の調査および必要と認める証拠調べを行う権限等を有していることについても、任意の事実調査や証拠調べを行なう権限は仲蔵人も当然に有しているし、強制的処分としての証拠調べ等が行なわれることは調停の趣旨に照らしてもほとんどないのであるから、このような権限を理由に、調停委員を「公権力を行使する公務員」と位置付けることはやはり本末転倒である。

(3) 調停委員となる権利について
   日本には、在日コリアン等の、サンフランシスコ平和条約の発効に件う通達によって日本国籍を失ったまま日本での生活を余儀なくされた旧植民地出身者及びその子孫などの特別永住者、並びに事実上永住状態にある定住外国人が、生涯日本社会の構成員として過ごすことを前提として日本国籍の有無にかかわらず、多数暮らしている。これらの人々についての不合理な差別を受けない権利、職業選択の自由、幸福追求権の見地からも外国籍者を調停委員から排除することは認められない。

(4) 多民族・多文化共生社会形成の視点
   外国人、特に、在日コリアンをはじめとする永住・定住外国人が日本の調停制度を利用する機会が多い。このような事件の中には、当該永住・定住外国人独自の文化的背景について知識を有する調停委員が調停に関与することが有益な事案も数多く存在する(但し、職業選択の自由、平等原則の視点からは、日本国籍の調停委員と平等に調停事件に関与できることが当然の帰結であり、この点を過度に強調することは避けるべきであると考えられる)。
   日本にいる外国籍者がより多くの社会組織に平等に参画できることは、多民族・多文化共生社会形成のための基本的要請である。日本に定住している外国人が調停委員に就任し、他の調停委員や裁判所の職員等と交流レよりよい調体制度を築くために共に活動することは、多民族・多文化共生社会形成の視点からも積極的意義を有するということができる。

4、まとめ
  よって、当会は、申し人れの趣旨記載の通り申し入れる次第である。


※以上のうち,下線,強調は,津久井による。
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