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sensoukeizai.jpg 極めてストレートなタイトルの本である。

 文字どおり「戦争」を「経済学」で切った内容だ。

 ただひたすらミクロ・マクロ経済学的な見地から,淡々と客観的分析を試みる。

 何か高邁な理念を語るわけでも,政治思想を分析するわけでも,社会学的なアプローチをするわけでもない。
 したがって,自己の考えを説得しようとするものでもない。

 ただ,ここで語られているテーマや結論は,たいへん明快である。
「戦争が経済にとって利益になるのか?利益にならないとしたら,なぜなのか?」

「戦争は経済を活性化するという鉄則は,かつては有効であったが,いまは当てはまらない」

「合理的な観点からすると先進国同士の戦争は考えられない」
(序文より)


 私が,とても分かりやすく示唆に富むと思ったのは,「第7章 テロリズム」におけるテロの経済的合理性の箇所である。

 911の自爆テロのような一見不合理な行動を取るのは,貧困等が一因になっているのではないかという疑問に対して,
「比較的裕福だが抑圧の厳しいサウジアラビアのような国は,貧乏だが市民権を守る伝統のある国よりもテロリストの温床になりやすい」
という実証分析をまず示している(314頁)。
 そして,よく知られている経済学のゲーム理論を用いて,「現状を変えたい」と思っている人々の行動をモデル化してみると,コストの優劣からすると,本来であれば,
 現状 < ハイジャック < 爆弾 < ロビー活動 < 抗議活動
となるはずであるが,市民権の合法的行使が認められてないと,このモデルが使えなくなり,コストの低い爆弾に流れやすくなるというのである。
 かなり単純化された分析であるが,著書に示されている
「このモデルを見ると市民権の欠如が個人の選択肢をテロに向けやすくなることは分かる」
という結論は,「なるほど」と納得できる(318頁)

 私たちの国が,世界一安全な国だと言われていたのも,それだけ市民権がしっかり確保されていたからだ,というようにも言えるかも知れない。
 最近の規制重視・抑圧・監視に傾いた方向性は,経済的視点から見てみると,要注意かも知れない。



 こうした示唆的な分析がてんこ盛りである。
 もっとも,ヒジョーに分厚い本であるし,経済学の数式や統計の図や表があふれていて素人にはちょっと難しいから,全てを読破するには骨が折れるかも知れない。
 しかし,教科書として書かれている本であるし,挿入されているコラムだけでも面白いから,買って損はないだろう。



 本の紹介としては,表紙カバーの紹介文が最も上手だろう。以下引用する。
 戦争はペイするものなのか?
 戦争は経済に貢献するか?

 憲法9条改正? 自衛隊を軍隊に? でもその前に一度、冷静になって考えてみよう。戦争は経済的にみてペイするものなのか? ミクロ・マクロの初歩的な経済理論を使って、巨大な公共投資である戦争──第一次世界大戦から、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争まで──のバランスシートを丸裸にする。

 「戦争が経済を活性化する」は本当か?
徴兵制と志願兵制ではどちらがコストパフォーマンスが高い?
軍需産業にとって実際の戦争にメリットはあるか?
核物質闇取引の実際の価格は?
自爆テロはコストにみあっているか?
……などなど、戦争についての見方がガラリと変わる、戦争という一大プロジェクトを題材にした、まったく新しいタイプの経済の教科書。図版多数。

訳者・山形浩生による付録「自衛隊イラク派遣の収支分析」も必読。
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