JR福知山線事故から間もなく3年目を迎えようとしている。

 あれほどの事故を起こし,声高に安全を誓っていたにもかかわらず,JR西日本では,その後も事故が相次いでいる。
 オーバーランなどの日常ミスも頻発している。

 なぜなのか!
という声は,事故の被害者の方々の心痛の叫びである。
 深い憤りの情や,やるせない思いが伝わってくる。

 こうも改善が遅々としている様子を見ると,
    何か根本的なところが間違っているのではないか
と考えるのが通常の感覚だろう。

 そういう観点から,端的にJR西日本の姿勢の誤りを断じた,これ以上にない有識者の意見がある。
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 JR東海の代表取締役会長(現在)である葛西敬之氏の著作
 国鉄改革の真実  「宮廷革命」と「啓蒙運動」
である。

 この本は,「国鉄改革3人組」と呼ばれた一人である葛西氏が,国鉄分割民営化を軸に,その実態をまとめた本だ。
 JRのことを骨の髄まで知り尽くしたトップが,JR西日本の姿勢について「不可解である」と断じているのである。

 以下はこの本の290~291頁からの引用である。
JR西日本の経営体力は明らかに他のJR本州2社に比べて脆弱性がある。
したがって,上場基準をクリアすることを急ぐのではなく,JR東海と同じように,できるだけ設備の強化,技術力の蓄積など内実を厚くすることを優先するのが自然と思われた。

 ところが,JR西日本は我々のやり方とは対極的な基本戦略をとった。
すなわち,

 ①「良質の危機感」を掲げて要員,経費の徹底的な効率化を進める。

 ②山陽新幹線を4地区に分割して,地区内の在来線と一元管理する。

 ③在来線のうちローカル路線を鉄道部として路線別経営管理を行い,組織の簡素化と技術者も含めた職員の多能化を進めることにより要員を削減する。

 ④リエンジニアリングすなわち管理部組織のフラット化により管理部門の要員を削減する。

 ⑤社員,特に現場管理者の早期退職を勧奨し,余剰人員を削減する。

 ⑥これらの施策により人件費を極力削減するとともに修繕費の効率化設備投資の重点化により極力経費を抑制する。

 ⑦かくして他のJR本州2社に遜色のない利益を計上し,早急に株式の上場,完全民営化を達成する。

 この「良質の危機感」政策は,短期的な成果は挙げうるかもしれないが,長期の持続可能性が問われるところであった。
JR西日本がなぜ短期決戦型の戦略を基軸に据えたのか,不可解である。
 
 こうしてみると,強調した部分(強調等は津久井による)の必然の帰結が,福知山線事故であると思えてくる。
 なぜならば,事故調査委員会の最終報告書でも指摘されていた,

   ■基幹の東海道本線への接続のために急カーブに付け替え,

   ■ローカル線と位置付けられた福知山線にATSの設置を遅らせ,

   ■運転士の技術力が非常に低下していた,


という重大な問題は,既に葛西氏の本の指摘の帰結ではないか。

 JR西日本の姿勢が根本的原因であるとすれば,それが改められない限り,JR西日本の安全を確信できる日が来ることはない。
 
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