上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 裁判員劇は,弁護人が5人,検察官も5人という,普段の裁判と比べても,双方ともかなり気合いの入った陣容で臨むことになりました。

 1日目の午前中は,まず,裁判員の方々の選任の手続きから始まりました。
 身内の「サクラ」ではなく,本当に裁判所にはじめて呼ばれた,という感じの方々ばかりでした。
 なんとも言えない緊張感と言いますか,シーンとなった雰囲気は,かえって弁護側の緊張を誘うものでした。
 一定の審査を経て,最後は町内会で使う福引きのガラガラで,裁判員の6人が決まりました。
 今回は,女性4人,男性2人。
 3人の裁判官のうち1人も女性なので,裁判体は,女:男=5:4という構成です。
 検察官も5人のうち3名が女性でしたので,オール男性で構成された弁護団としては,それだけでジェンダー的に偏った気がして,なんとなく圧倒されました。

 1日目の午後は,裁判です。
 起訴状朗読,検察官の冒頭陳述,弁護人の冒頭陳述,供述調書など書証の朗読,証人尋問,被告人質問と続き,最後が,検察官の論告求刑,弁護人の弁論,と続きます。

 それぞれの場面で,盛り上がったシーンがあったのですが,今回の裁判員劇で「やっぱ裁判員裁判はチャウなあ~」と感じたのは,次の3点。
 1 パワーポイントを駆使したプレゼン等のアピール
 2 書類の朗読や尋問を「聞かせる」ための努力
 3 検察官からのキビシイ異議
 あと半年で本格スタートを控えているのですから,臨場感が高まるのは当然なんでしょうけれども,これまでボーッとしてあまり関わってこなかった私としては,はなはだしいカルチャーショックを受けました。
 しかし,壇上の裁判員のみなさんは,それ以上のカルチャーショックを受けているのだろうと思いますと,ビビッている場合ではないな,と思い直すことも度々でした。

 最後は検察官の論告は,長い文章にもかかわらず,全て暗記してカンペも見ずに,よどみなくキッチリと論じあげました。
 私は弁論の担当でした。
 しかし,「キッチリ」というのが大の苦手な私は,前日ご紹介したシナリオどおり諳んじることなど到底できません。
 その場の雰囲気と,あらかじめ用意していたパワーポイントの画面に合わせて,それこそ舞台でアピールするつもりでしゃべくりました。

 これで1日目は終わりました。2日目の「評議」の様子と結論は,また後日に。

( なお,裁判員のみなさんに,裁判終了後にお配りした文書(「弁論要旨」)は,以下の通りです。)
平成20年(わ)第2008号傷害致死被告事件
被告人  島 拓 郎

          弁 論 要 旨

                        平成20年10月27日
神戸地方裁判所第2刑事部  御中

                     弁護人   朝 本  行 夫
                     同     津 久 井  進
                     同     森 川 太 一 郎
                     同     尾  藤   寛
                     同     中 島  健 治

 弁護人の意見の要旨は以下のとおりです。

1 弁護人は,島拓郎氏(以下「島氏」といいます。)が傷害致死罪で処罰されることには異議はありません。
 この事件では,島氏にどのような刑罰をかせば科せば,社会的に妥当なものと評価され且つ被害者のご遺族を含めた関係者の思いに応えることになるかを,裁判官・裁判員の皆様に慎重にお考え頂くことになります。
 以下,考慮すべき要素を,4つのポイントに整理して,簡単に箇条書きにしてありますので,参考にしていただければと思います。

2 事件が偶発的な事件であること
・本件の状況を見る限り,結果は重大ですが,決して悪質な事件ではなく,不幸な偶然が重なってしまったために,起きた事件と考えられます。
・島氏は,奥田氏に数発手を出していますが,当たったのは2発だけです。
・イスに座ったまま,しかも足を宙に浮かせたまま,身体の向きもややねじった姿勢で,殴っているので,力の入りようがありません。
・胸倉をつかんだりつかまれたりしている中で殴っているので,致命傷になるような衝撃が発生するはずがありません。
・イスや床下に転倒させようとしたわけではなく,島氏が押し倒したりするような行為も一切見られません。
・床に落ちたのはイスの面積が小さかったからであり,床に落ちる衝撃が大きかったのはイスの位置が高かったからであり,頭部に衝撃が大きかったのは床面が固かったからです。
・イスに倒れてしまったのは,奥田氏が酒を飲んでいて力が抜けてしまったことも一因だったと思われます。
・いずれにしても,島氏の動機は,このような重大な結果を予想したものではありませんでしたし,このような顛末や経過になることも予想をしていたものではありませんでした。
・まさに偶然が重なった不幸な結果と言うほかありません。

3 遺族の方々の心情
・妻奥田夕子氏は,島氏を許しています。
・夕子氏は,島氏が社会復帰して自分を助けてくれることを期待しています。
・母奥田芳江氏も,島氏の人柄やこれまでのことを汲んで島氏を許しています。
・芳江氏も,島氏のことを心配しています。
・夕子氏も芳江氏も,島氏が直ちに刑務所で服役することには反対しており,執行猶予付の判決を望んでいます。
・弟の奥田浩太氏も,夕子氏や芳江氏と共に,示談書に署名し,島氏を許しています。
・被害者の奥田英一氏も,諸状況から推察する限り,島氏に対して感謝の念を常に持っておられましたので,きっと寛大な心情を抱かれるだろう考えられます。
・遺族の意向に反してまで,厳しい刑罰を科すことは適当ではないと思われます。

4 島氏の反省の情
・島氏は,自分の起こした事件の結果の重大さを,十分に受け止めて深く反省をしています。
・島氏は,事件を起こしてから,本日の公判の場に至るまで,一貫して真摯な姿勢で反省をあらわしています。
・島氏の反省は,この場限りの一過性のものではなく,今後の人生において,二度と過ちを起こすことの無いように活かされる誠実なものと認められます。
・島氏自身が,奥田氏のことを,強く信頼し,敬愛してきたこと(そのために多額の借金をしたり,自宅に抵当権を設定したり,身を粉にして働いてきた)ことからして,その命を自らの過ちによって絶ってしまったことを,深く悔いております。
・島氏の反省は,島氏にどの程度の刑罰を科すか,特に執行猶予を付けるかどうかを考える上でとても重要と思います。

5 その他の量刑事情
・島氏は,遺族との間で示談書を取り交わしています。
・示談をすることは,民事的にも,社会的にも,償いをしたことを示すもので,遺族に対しては,刑事罰以上の意味を持つといえます。
・示談金400万円という金額は,現在の島氏にとって最大限の誠意といえますし,うち100万円は支払っていて,できる限りのことを尽くしていると評価できます。
・示談書の中で,「宥恕」の文言が入っています。
・示談をきちんと実現できるようにするため,再就職先を確保しています。
・再就職先となる松本酒店できちんと働くことによって,一社会人としての責任を全うすることも期待できます。
・再就職先での雇主による監督も期待できます。
・島氏の母親が,島氏を支えること,そして島氏と共に償いをしていくことを誓っています。
・島氏を支える知人たち10名が嘆願書を書いてくれました。
・嘆願書にあるとおり,島氏がこれまで社会人として真面目に一生懸命頑張ってきたことは間違いありません。
・嘆願書に応えることは,社会の要請に応えることにもつながります。
・島氏は,まだ年も若く,更生する機会(チャンス)を与えていただくべきだと思います。
・島氏には前科も前歴もなく,犯罪を犯さないよう刑務所で教育を受けさせなくても,再び犯罪を犯す可能性は認められません。
・すでに島氏は,長期間にわたって留置所や拘置所に勾留されていて,刑罰に等しい処遇を受けているといえます。
・島氏を,職業訓練したり,内省を促したりする必要は乏しいといえます。かえって,実刑となって刑務所に入所すると,示談を実行する時期がずれ込んだり,不良な人的関係ができたりするなど,デメリットが大きくなることが懸念されます。

6 結論
 この事件は,これまで懸命に生きてきた普通の市民に起こった不幸な事件・事故です。島氏に対する処罰は,懲役刑を命じるだけで十分であり,直ちに刑務所には入れず,その執行を猶予することも許される事件です。
 ほんの少しだけ,温かい眼差しを注ぎ,立ち直るチャンスを与えることは決して,島氏を許してしまうことではない,適正な処罰と矛盾しないとお考え下さい。
 弁護人は,この事件の全ての事情を考慮し,検察官のご主張を尊重すれば,懲役2年,執行猶予3年の判決が相当と考えます。
                                      以 上
Secret

TrackBackURL
→http://tukui.blog55.fc2.com/tb.php/707-147d3f1c
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。