上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
 1月1日から,産科医療
   「無過失補償制度」
がスタートした。

 これは,医療事故の分野では,はじめての取り組みで,大きく注目に値するものだ。

 制度の中身を,ごく簡単にいうと,
  ◇出産時の事故で重度の脳性まひが生じたとき
   (→つまり,先天性のまひや,軽度のまひは除外)
  ◇病院側に過失がなくても
   (→つまり,因果関係さえあればよい,ということ)
  ◇患者に総額3000万円の補償が支払われる
   (→つまり,これを超える損害については別途の訴訟の可能性がある,ということ)
というものだ。

 この制度が立ち上げられた理由は,出産時の医療事故では,病院側の過失の有無をめぐる裁判が非常に難しく,患者の救済が図られにくく,また他方で,医療過誤訴訟の頻発が医師の産科離れの一因にもなっている,というところにあるそうだ。
 つまり,
  ◆患者に,金銭的な救済を図るとともに,
  ◆医師に,訴訟リスクからの解放を図る

という,二つの目的を満たす画期的な制度というわけだ。

 しかし,よく考えてみると,いろいろと懸念もある。

 第一に,補償金の運用は民間の保険会社が行っているということ。
 制度が失敗するときは,だいたい,「誰のために,何のために」という観点を見失っている場合が多い。
 なぜ,完全な公的制度にしなかったのか,理由は不明だが,
 いずれにしても,今回の制度運営が,「会社の利益採算」(=保険会社のための,利益追求のために)という方向に流れないかが強く懸念される。


 第二に,「過失の有無を問わない」という制度の核心が,中途半端にならないか,ということ。
 患者の願いは,決して金銭的補償だけでなく,同じ悲しみを生じさせないで欲しいという「再発防止」も含まれていることが多い。
 そこで,事故原因については「原因分析委員会」が検討することになっている。
 しかし,それが医師の責任追及(たとえば行政処分)の手立てになると,結局,過失の有無を問うのと同じことになる。
 そこらあたりの関係と仕組みが,どうなっているのか,よく分からない。
 中途半端だと,患者も悲しむし,医師の不信感も強くなるだろう。


 第三に,補償するなら全面補償をすべきだ,ということ。
 損害が3000万円を超える場合は,やはり訴訟を行わざるをえない。
 したがって,中途半端な補償は,かえって訴訟を誘発するおそれがあるという声もある。
 聞くところに依れば,スウェーデンでも,産科無過失補償制度が導入されたが,訴訟の損害賠償額と,無過失補償制度の補償額が同額程度なので,訴訟のインセンティブ効果が抑えられ,医療過誤訴訟が著しく減少したということだ。
 参考にすべきではなかろうか。


 誰のために(=患者と医師のための),何のための(=完全補償と安心のための)制度であるか,というミッション(使命・目的)を徹底した制度にすることが重要であり,
 中途半端な運用は,かえってよくない。
 教訓はゴマンとある。

 目的にかなった制度となることを願うばかりだ。
Secret

TrackBackURL
→http://tukui.blog55.fc2.com/tb.php/729-097cebba
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。