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 JR福知山線脱線事故において,航空・鉄道事故調査委員会がまとめた
   「鉄道事故調査報告書」
は,膨大な報告書である。
 そこには,冒頭,次のような宣言が記載されている。
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 本報告書の調査は、本件鉄道事故に関し、航空・鉄道事故調査委員会設置法に基づき、航空・鉄道事故調査委員会により、鉄道事故の原因を究明し、事故の防止に寄与することを目的として行われたものであり、事故の責任を問うために行われたものではない

航空・鉄道事故調査委員会 委員長 後藤昇弘

 今回,事故調査委員の一人である山口浩一氏が,JR西日本の山崎社長に報告書の内容を漏らし,事故原因の枢要の一つであるATSについて,内容の修正を働きかけたことが分かった。

 もとより言語道断なのであるが,
とりわけ,事故調査報告書の冒頭のミッションに反していることは許しがたい。

 この調査は,
   「鉄道事故の原因を究明し、事故の防止に寄与する」
という目的があるからこそ,被害者をはじめとする関係者,ひいては社会全体の信頼性が担保されていたのである。

 しかるに,国鉄出身者である山口浩一氏のコメントは,
   「安全対策に必死で取り組んでいた彼(前社長)を助けたい一心だった」
というものであった。
 つまり,「事故の原因の究明」ではなく,
   「知人であるJR社長の山崎さんを,個人的に助けたい」
ということであって,
   客観性を捨て,主観的感情を優先する
という発想で臨んだというのである。

 人を裁いたり,責任を問うたりするときは,「情」の介入も許されるであろう。
 しかし,鉄道事故調査委員会には,
   「事故の責任を問うためには行わない」
という約束がある。
 したがって,委員は,このような人間的な「情の縛り」から解放されているのである。
 にもかかわらず,
    知 < 情
とした山口委員の感覚の中に,専門家としてのミッション(=誰のために,何のために行うのか,という命題)が欠如していることが情けない。

航空・鉄道事故調査委員会設置法は,次のように規定していた。
(目的)第1条
  この法律は、航空事故及び鉄道事故の原因を究明するための調査を適確に行わせるとともに、これらの事故の兆候について必要な調査を行わせるため航空・鉄道事故調査委員会を設置し、もつて航空事故及び鉄道事故の防止に寄与することを目的とする。

 そして,委員については,次のように規定する。
(委員長及び委員の任命)第6条
委員長及び委員は、委員会の所掌事務の遂行につき科学的かつ公正な判断を行うことができると認められる者のうちから、両議院の同意を得て、国土交通大臣が任命する。

 もちろん,当たり前のこととして,次のような規定もある。
(服務) 第10条
委員長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職務を退いた後も、同様とする。


 現在,この法律は,運輸安全委員会設置法に改正されているが、内容はほぼ同じである。

 報道によると,規制に罰則がない等と指摘し,あたかも委員に対する規制を強めるような見直しも考えるべきとの意見もあるように見受けられる。

 私は,法規制が不十分だとは思わない。

 ヘンに,委員の調査活動を法律でがんじがらめにすると,せっかく被害者や社会や開かれた方向性に向かっているのに,これに逆行するおそれもある。

 悪いのは法の規制ではなく,
 この山口委員のように,
   そもそも,基本的なミッションを分かっていない
のが問題なのである。

 鉄道事故調査委員会は,誰のために,何のために,存在しているのかをあらためて肝に銘じていただきたい。

 「専門性」というメッキ(≒御用学者)にごまかされることなく,
 「科学性」(=御用学者の対極にある,因習にしばられない客観的視点の持ち主)
を重視した委員の選任を行っていただきたい。
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