航空・鉄道事故調査委員会が,JR福知山線脱線事故の鉄道事故調査報告書(最終報告書)をまとめたのが,平成19年6月28日である。
 既に2年の月日が経過しているが,今回の一連の不祥事(委員による秘密漏洩問題)で,大きな問題が判明した。

 新聞報道(神戸新聞2009年9月26日付夕刊より)によると,以下のとおりである(→こちらより)
 JR西が事故調に提出した会議資料は7枚だったが、地検が今年5月、本社などを捜索した際、実際には9枚あることが分かり、2枚が未提出だったことを確認したという。
 関係者によると、2枚は、会議の参考資料でATSの性能や函館線の事故の説明が含まれていた
 この点は,まさに地検が山崎社長を起訴する判断に踏み切った枢要部分である。

 情報漏洩をした山口委員が,山崎社長の求めに応じて,事故調査報告書の記載に手を加えようとしたと思われる部分は,おそらく,以下の部分だろう。
 事故調査報告書の230ページの記載である。
 事故現場の右曲線については、現在の線形となったのが2.8.1 に記述したように平成8年12月であり、また2.21.6 に記述したように簡略な計算式により試算した転覆限界速度(本件列車1両目定員150名乗車時)104km/h をその手前の区間の最高速度120km/h が大きく超えていたことから、同曲線への曲線速照機能の整備は優先的に行うべきであったものと考えられる。
 また、もしP曲線速照機能が使用開始されていれば、本件列車のように本件曲線に制限速度を大幅に上回る速度で進入しそうな場合には、本件曲線の手前で最大Bが作動し、本事故の発生は回避できたものと推定される。


 しかし,この点に関するJR西日本の認識について,事故調査報告書は,次のように記載している。
 すなわち,229ページの記載は次のとおり。
平成15年9月9日の鉄道本部会議の資料、2.5.7.1 に記述した運転法規の補助教材の記述等から、同社には曲線区間における速度超過による事故の危険性の認識があった可能性が考えられる。
 しかし、2.20.2.1 に記述したように、同社が発足した昭和62年4月以降の曲線区間における速度超過による列車脱線事故等はJR貨物函館線の下り勾配区間における2件の死傷者のない列車脱線事故のみであったことから、安全推進部長が曲線区間における速度超過による脱線を具体的な危険要素とは認識していなかった旨口述している(2.13.8.4 参照)ように、同社がその危険性を曲線速照機能の整備を急ぐことが必要な緊急性のあるものと認識することは必ずしも容易ではなかったものと考えられる。
 つまり,曲線における脱線とATSの関係について,JRの社内資料があるのは,平成15年9月9日の分しかないと,いうのが一根拠とされている。
 しかし,実際には,平成8年12月に発生した函館線の脱線事故については,平成9年1月の社内会議資料で報告されており,ATSとの関連についても言及されていたのである。

 事故調査報告書の,最も重要と思われる部分について,肝心要の資料が,抜き取られていたのであるから,事故調査委員会の目的である「鉄道事故の原因を究明し、事故の防止に寄与すること」を真摯に追い求めようとするのであれば,少なくともこの点に限定してでもよいし,結論に影響を及ぼさないとしても,報告内容の見直しの作業を行うべきではなかろうか。

 それが,疑念や汚名が着せられつつある最終報告書の信頼性を回復する,有効な方法だと考える。
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