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 かたやまいずみさん著の福島のおコメは安全ですが、食べてくれなくて結構です。-三浦広志の愉快な闘い(かもがわ出版)を,是非とも紹介したい。

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 昨日(7/9),兵庫原発賠償訴訟の期日があり,私たち弁護団は「内部被ばくの危険性を具体的に述べ,兵庫まで避難する選択をしたことが相当なのだ」という書面を裁判所に提出した。若手弁護士たちが約1年かけて作成した力作だ。
 「美味しんぼ鼻血問題」のような,気持ちがめげそうな科学論争を法廷で展開したくないという本音があって,全国各地の訴訟でもやや論点化するのに消極的な傾向にあるが,兵庫の弁護団では正面からこの問題に向き合うことにした。

 福島県内に残った人々と自主避難者のわだかまり。
 復興か避難か。福島の農業生産者の苦悩と全国の消費者のイメージ。風評被害なのか本当に危険なのか。科学の問題か感情の問題か。
 悪者(責任者・原因者)はハッキリしているのに,なぜ被害を受けた人々の内部でコンフリクトが生じるのか。そもそも二項対立という構図が間違っているのではないのか。
 こうした真綿で締め付けられるようなモヤモヤ感が,原発被害の本質なのだろうが,年月が経つにつれてより一層ストレスは増し,心身を蝕んでいく。

 そこに対する一つの答えが,本書の大胆なタイトルである。
『福島のおコメは安全ですが、食べてくれなくて結構です。』
 はしがきで,こう言い放った三浦広志さん(浜通り農民連副会長)について,かたやまさんはこう書いている。

「こいつは何を言っているんだろう。(中略)福島のコメを薦めるために来ているのだ。「食べて下さい」だろう!だけど一方で,妙に納得する自分もいる。コメをつくっている当事者から安全を宣言され,さあ買ってくださいと言われて,科学的にはそうだろうなと思っても,食べるのを押しつけられているように感じる人もいるかも知れない。(中略)その接点は案外こういうところにあるのかも知れない。」


 かたやまさんは,ブロガーとして私の師匠格というかアネゴである(私のブログはすっかり開店休業。すんません。‥‥)。主人公である三浦さんの奥行きと人間力,そして,語り部であるかたやまさんの感性と筆力が,むちゃくちゃ重いこの問題を,軽やかさに爽やかに解きほぐしてくれる。

 私が強く共感し,強く興味を持った点は3点ある。

 ひとつ目は,本書で引用されている三浦さんの数々の至言だ。
 とりわけ,ラストで紹介されている「そんな人たちに福島県産の作物が安心して食べられるものなんだよと伝えるには,とても長い時間がかかるんです。敵は食べてくれない消費者じゃない,東電と政府なんだよ」という一言だ。
 そうなのだ。対立する相手は,私たち同士ではない。生産者と消費者でもないし,滞在者と避難者でもない。
 責任を負うべき,東京電力と政府なのだ。三浦さんは愉快な人柄として登場するが,敵に対する追及は徹底している。だからこそ,仲間たちに向ける目が優しいのだ。
 私たちも,思いをぶつける相手が誰なのかを絶対に忘れてはならない。

 二つ目は,三浦さんの交渉術だ。
 三浦さんが東電や行政と渡り合うシーンがいくつも登場する。
 その交渉の進め方が,上手というか,巧妙というか,老獪というか,とにかくうまいのである。
 そのヒミツは本書を手にとって読んでいただきたいが,私としては,「一人ひとりの人間」を尊重しようとする態度にあるのだろうと解釈した。
 組織や依頼人を背負って交渉に当たる人々がバリアーにしている殻を,そのことをよく分かった上で,剥ぎ取っていく。
 頑なで高圧的な弁護士が,三浦さんによって軟化する場面は,身につまされて,思わず笑ってしまった。
 学ぶべきところ大である。

 三つ目は,福島の農業者たちの苦悩だ。
 本書は,徹底したポジティブシンキングで貫かれているが,そこで示されている事実は間違いなく深刻で,それも淡々とリアリティをもって記録されている。
 南相馬市はいまのままでは安楽死させられる。双葉郡は即死だったが,南相馬はじわじわと死んでいく町になっている,という。
 そうしたやるせない現実の数々。
 その現実を正しく直視するところから,始めなければならない。
 それが,本書の最終節『どうやって楽しく生きていくかが人生のすべて』というタイトルにつながっている。

 「フクシマ」に関わりつつ,悶々&暗澹としている人にとっては,絶好の書。
 一気に読めるが,内容は奥深い。推薦の書である。
 アネゴ「お玉おばさん」のファンにとっても大満足まちがいなし。
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