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 昨日の朝日新聞に,
格差社会のひずみにより少年の「親殺し」が急増している
という見出しの記事が出ていました。

 なんとなくこの見出しに違和感を感じたので,ちょっと考えてみました。

 大人から見ると,少年が起こす非行は,とてもあさはかに見えて,考えが浅い故の過ちであると感じたりします。
 だから,大人は,本人に対して、単純に「ダメじゃないか」と抑え,諭すことが多くなりがちです。

 私ら弁護士が活動する上で関与する少年事件の審判でも,イマイチの裁判官に当たりますと,事件の直接のきっかけや経緯にばかり注目して,その少年の置かれていた環境の背景事情に踏み込むことのない「あさはか」で「思慮の浅い」審判を目にすることがあります。

 子どもは社会を映す鏡だ

とよく言いますが,そういう観点からすると,少年事件に当たるには
  ■その少年の置かれた具体的な環境と
  ■その環境の背景にある社会状況
の両面を,見失ってはいけないということになります。

 視点を変えると,重大な少年事件の発生は,現代社会に対する警告シグナルである,ということでもあります。
 今回の新聞記事は,そういう切り口で少年事件を見ています。
 そして、少年の事件の背景にある社会状況として,
  格差社会
があると指摘しているものです。
 確かに,この指摘は、一面では正しいように感じます。

 ただ,格差社会」→「少年非行の増加」とダイレクトにつなげるのは,あまりに論理の飛躍があるように感じるわけです。
 因果関係をつなぐ上で,何か,1枚カードが落ちている。
  「格差社会」→「何か大切なものが失われる」→「少年非行の増加」
この大切なものとは、何だろうか。

 思うに、それは,
   その子どもを一人の人間として尊重する
という視点ではないかと思います。
 これは,憲法でいうところの「個人の尊重」「個人の尊厳」です。
 あるいは「君らしく生きてみたらいいじゃないか」という,おおらかさかも知れません。
(そういえば,十数年前に,ハムのコマーシャルで「わんぱくでもいい,たくましく育って欲しい」という印象的なフレーズがありましたよね。現在,それに似たようなフレーズって聞かなくなりました。)

 格差社会というのは,
  「勝ち組」=正しい
  「負け組」=誤り
という単純な二層構造を作り出します。
 そこには,「世界で一番の花になる」という発想は生まれても「世界で一つだけの花である」という発想が生まれる余地がありません。

 「格差社会」→「勝ちは○、それ以外は×」→「価値の画一化」→「個性の軽視」→「その人らしさの否定」→「ストレス」→「爆発」
という流れかなと思います。

 そうすると、格差社会の弊を除去するには,その子の「自分らしさ」をどれだけ大切にできるか,がキーワードになります。

 新聞記事の中にも,親殺しの動機は,「親に対する単純な憎しみを動機とするものよりも、自分らしさを取り戻すため」の衝動であるというコメントもありました。

 本質は,まさにそこにあるのではないでしょうか。

 安倍氏が目指す教育再生は,基本的に競争原理の導入です。
 少年非行の防止は,道徳心の押し付けによって解決しようとしています。
 これはまさに「自分らしさの否定」を前提とする教育です。


 安倍さんは「再チャレンジできる社会」を訴えていますが,非行少年が,まさに再チャレンジして「更生」できるような社会福祉システムについては,あいかわらず冷遇しています。
 上ばかりを見て、下は見ない(あるいは下は否定する)、という姿勢です。

 安倍さんに教育再生を任せると,この「親殺し」の風潮がさらに高まることになるでしょうね。

 安心して暮らせる国にするためには,自分らしさを尊重する社会を,一刻も早く実現することが大切でしょう。
(10月9日の「競争やめたら学力世界一~教育基本法の改正の前に考えること!」につながります。


なお,話題の朝日新聞の記事(10月14日)の要旨は以下のとおりです。

少年の「親殺し」急増 格差社会のひずみか

 未成年者による親の殺害や殺害未遂事件が急増していることが、警察庁のまとめでわかった。
 例年数件で推移してきたのが、昨年はいきなり17件に跳ね上がり、今年もすでに10件が報告された。
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 経済的に恵まれた家庭での、男子による事件も目立つ。
 親による過度な期待で居場所を失う少年。専門家のなかには「格差社会」のひずみを指摘する声もある。

 「勉強しろ、部屋を片づけろと小言を言われ、いらいらしていた。中学になって特にうざったくなった」。神奈川県大和市で4月、中学1年の男子生徒が母親の首を刺し、殺人未遂容疑で補導された。少年は兄からも同じようなことを言われ、「家族はいらない」と思うようになったという。

 6月には、奈良県で、医師の父から良い大学の医学部へ進学するよう期待されていた高校1年の男子生徒が自宅に火をつけて母親、弟妹を死なせ、大きな反響を呼んだ。男子生徒は「今までの自分の生活を消し去り、新たに生きていきたかった」と話したという。

 刑事処分対象になる14歳以上の子どもによる親の殺害(未遂含む)は、年間3~10件で推移していたのが、昨年は17件と急増した。
 今年も昨年に次ぐハイペースで、8月と9月にもそれぞれ2件ずつ相次いだ。

 事件の急増を受け、警察庁は先月、少年による親の殺人・殺人未遂事件にどのような傾向があるのか分析に乗り出した。
 昨年と今年の目立った15事件を動機別に分類。
 「成績や生活態度を叱責(しっせき)・注意された」が過半数を占め、「異性交際を注意された」「親に暴力を振るわれた」などを上回った。

 親に対する単純な憎しみを動機とするものよりも、自分らしさを取り戻すために、家族や家庭を消し去ろうとする衝動が目立つ。
 元東京家裁調査官の浅川道雄さんは「ここ数年の勝ち組・負け組という風潮が子どもの居場所を奪っている」と指摘。
 「我が子を勝ち組に入れたいと思う親と、自我が芽生え始めた子どもとの対立の場面も従来以上に増えている」と言う。

 教育評論家の尾木直樹さんも「社会の二極化が進み、我が子を負け組にすまいとする親の不安が犯罪を加速させている」と話す。



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